リペア ファイル その604
マーチン D−28 / バインディング剥がれ・ナット再成型・サドル交換(オフット・バランス加工)・フレット部分すり合わせ
フィンガーピッカーやフラットピッカーの要求を満たす ポテンシャルを持つドレットノートtypeギター。その定番が”マーチンD−28”です。
今回はリペア時に『調整/チューンナップ』も行いました。
裏板の腰の部分でバインディング剥がれが起こりました。マーチンギターではよくある現象です。良質のローズ柾目板を使ってあっても日本の湿度変化に応じきれず膨らんだり縮んだりし、裏板のバインディングに負担がかかり剥がれて来たり、バインディング自体が経年変化で縮んで剥がれてきます。
接着剤を摺り込んでテープで留めてから、腰の形に沿う型をはめて圧着します。左右のバインディングとも同じ作業を繰り返して留めました。
ここからは音に関するチューンナップです。音の分離と立ち上がりを考えてナットを再成型しました。
マーチンオリジナルより鋭角なナットになっています。
サドルを牛骨に交換する際に弦長補正する『オフセット加工』と
音の分離をよくする『バランス加工(トップとの接触面を各弦独立させる)』を施しました。
サドル底面が橋脚のような形に整形してあります。
ブリッジピン穴からサドルピークへの立ち上がり角度を改善すべく、まず弦用の溝を特殊刃物を付けたジグソーでブリッジに切り込んでから、
サドル側へ弦の誘導溝をミニルーターで付けます。
これでブリッジにストレスなしで弦が収まり、かつサドルピークへの立ち上がり角度も十分取れます。
トップへ弦振動がロスなく伝わることで音量・情報量が改善されます。
トラスロッドが入ったマーチンですが、ロッド調整するとややローフレット部に波が見られました。その部分だけを『すり合わせ』してフラットに調整します。
ヤスリ掛けの後はフレットピークを再成型して磨き上げておきます。
ネックの状態もよくなりました。
耳のいいフィンガーピッカーの依頼者でしたが、チューンナップ後は「音のばらけ」がよくなって満足して頂けました。フィンガーピッカーによる演奏では、はじく2〜3音の隙間がなく鳴ってくれ、どのポジションでも音量差やサスティーンの差が少ないことが求められます。
主旋律が映えることはもちろんですが、ベース音や和音もきちんと聞こえる(内声もきちんと聞こえる)ことが大事です。音がひと固まりになって聞こえるとと「バランスが悪く」感じるのだと思います。
メーカー出荷時にここまでの調整はしてありませんので、メンテンナンスとともに『調整/チューンナップ』をしてみたらいかがでしょうか。
関連ブログ:マーチンギター修理インデックス:http://9notes.jugem.jp/?eid=307
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