2019.05.18 Saturday

リペア ファイル その538

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    Gretsch G613IT-62VS  / ”スモークド乾燥”処理

     

    ハイスペックのグレッチギター。ホーローボディにTVジョーンズ製の”フィルタートロン”PUが搭載されています。ハンバッカーPUなれど低出力でクリーンなサウンドを醸し出します。とてもいいギターですが、少し「若い音」でした。この件で”スモークド乾燥”処理を依頼されたのでしょう。依頼される多くは、この楽器の本来のクオリティーはもっとあるんじゃないか?という期待からだと思います。それにお応えするひとつの答えが”スモークド乾燥”です。

    ギターはアコースティックギター・エレクトリックギター共に本体(ネック・ボディ)の”鳴り”が出音に影響されます。弦振動の伝達の密度や濃度が出力に影響されるのです。”燻煙”の作用が木部の細胞内に変化をもたらし振動能率を改善します。

     

    乾燥庫に入れたグレッチ。窯から出る煙が乾燥庫に充満します。その際に若干火の粉も飛ぶのでギターに網掛けしています。

     

    袋から取り出したカット。油分・ヤニなどが袋に付着しています。煙とともに熱も加わるのでほんの少し焼け色が付きます。

      

     

    本体(ボディ・ネック)にも少しヤニが付きますので、それをエチルアルコールで拭き取るときれいになります。

     

    ヤニを取ったらバフで磨き上げます。”スモーク”する前に電装系を外した際に ポットに番号を振って起きました。その順番に従い組直して行きます。グレッチは特殊なスイッチが多いので間違えないように・・・

      

    セミアコは内部に手が届かないので組み直しに手間取ることしばし。痒いところに手が届かない感じです。

     

    ゼロフレットを採用しています。

      

    マスターボリュームが右肩にあるのは便利ですね。一方トーンコントロールは左肩にある3wayスイッチでキャパシティーの容量で変化を付けるプリセット型となっています。右下の3wayスイッチはスタンバイスイッチなるもので、センターにすると出力しない仕組み。

     

    ハンバッカーPUですが、サウンドはシングルに近いですね。STシングルともP90とも違う”フィルタートロン”独特のサウンドは、グレッチギターのカラーを特徴付けています。

      

     

    ”スモークド乾燥”処理により生音がアップ。また音の立ち上がり、音の深み(倍音構成の改善)が増してます。枯れたサウンドではなく弾き込んで”鳴り出した”音だと想像していただけますか。

    ”スモーク”の匂いが残りますが、タバコの臭いとは質が違い”スモークドハム”や”スモークドサーモン”の匂いに近いです。半年くらいでほとんど消えますが、これだけはご容赦ください。

     

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    2019.03.12 Tuesday

    スモークド乾燥処理済み「ホセ・アントニオ No.1」の感想

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      HP内にあるshopで販売した スモークド乾燥処理をした「ホセ・アントニオ No.1」を購入者からレポートを頂きました。本人の承諾を得て購入後のこのギターに関するレポートをアップさせてもらいます。

       

      ”スモークド乾燥”を施したクラシックギターの様子をつぶさにレポートしてくれています。

       

       

        

       

        

       

        

       

      「ホセ・アントニオ購入してほぼひと月ということで、まだ音は変化しつつある感じですが、とりあえずこの時点での感想です。

       

      最初の強烈な匂いもだいぶ落ち着いてきて、弾かなければ気にならなくなりました。ただ鳴らし始めると、匂い粒子が目をさますのか、サウンドホールから漂ってきます。それにも慣れてきましたが、温湿度によって強弱の変化はあるようです。ちなみにギターは18畳の杉壁の部屋に吊るして保管。

       

      最初ギターが届いた時にも何か違うなと思ったのですが、スモーク後のバフ掛けとか細かく調整が加わっているようで、そのあたりのひショップさんとひと手間ふた手間、注がれた目と手の名残がギターにまた違った感じを与えています。


      この価格で単板とは思い切っていますが、材のランクはもちろん超高級機に劣ってはいるものの、ギターとして良くできていると感じました。

       

      肝心の音ですが、匂いが気にならなくなって弾く時間も増えてきたせいか、お互いに気持ちが通うようになってきた感じで、少しずつ鳴り始めています。説明にある通り、やはり10年程度以上のエージングと言うべきなのか、新品でもヴィンテージでもない、ヌーベル・ヴィンージ?やはりその途中の音という感じです。


      というより、そう言われてみればそうかなという印象。明るい音色、音量はけっこうある、何か発音が明瞭という感じ。サステイン良好、特にホール感というのか全体の響きがエフェクトがかかったようでこれだけでも高ポイントです。高音側に比べると低音の方がまだほぐれてないという感じもします。

       

      音の立ち上がりがいいのか、最初はじゃじゃ馬かと思っていたものの、ソフトにヴィブラートをかければ、割と素直にかかってくれる。そう思いなおして弾いてみると、このギター反応がいいので弾きやすい。昨晩など思いっ切りスローで「酒とバラの日々」とかを鳴らしてみたら、メロディーとコード進行の重なり具合、その絶妙さに不覚にもグッときてしまった。


      この時点で、自分のレパートリーを一曲でも、ワンフレーズでもそれまでにない感じで歌ってくれれば、もうスタメン確定です

       

      個人的感想として、お店で買うギターにはまだ「製品」の部分が残っていて、そこからの弾き込みで徐々に自分の「楽器」に変貌していくと思うのですが、このギターはもうすでにその「楽器」に近づいている印象があります。


      きっとこれは、スペイン産とショップさんとのコラボまたはハイブリッドと言うべく、スモーク処理による市販品とは別物のカスタムギターなのだと納得。」

       

      ****(後日のメールより)

       

      「まだまだ半信半疑なのですが・・・今朝も出勤前にちょって鳴らしてみたのですが、やっぱり、ホセは鳴るんですよ。

       

      すーっと気持ちよく。すぐ曲の世界が立ち上がってくる。単に杉というだけではなさそうで、例えてみれば、美声の女子アナのようで、もう発声そのものが心地よい。やっぱりこれは現実だと認めざるを得ない(笑)

       

      最初の匂いは、けっこうハードルで反応はかなり個人差があると思いますが、ここをクリアーしてでも、自分にとってのギター王国を目指す旅人(笑)は必ず何人かいると思います。」

       

      ***(Kさんありがとうございました)

      (匂いのことなど、当工房でこうは表現できないこともレポートしてありリアリティーがあるかと思います。音に関しての感覚は個人差がありますが、”スモーク”効果を少しでも言葉で感じていただけたら嬉しいです)

       

      関連ブログ:http://blog.9notes.org/?eid=754

       

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      2018.11.19 Monday

      スモークド乾燥処理スモークド済み「ホセ・アントニオ No.1」の販売

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        スペイン製クラシックギター「JOSE ANTONIO No1」(杉)を”スモークド乾燥”処理し、細部調整してあります。

        この個体をHP内のShopで販売致します。   ¥125,000(税込み・送料込み)ハードケース付き

        クラシックギターの普及機はトップ単板、サイド&バックが合板製のものが2〜5万で販売されており、一方プロユースの高級機は50万以上、コンクールの使用に耐えられる楽器は100万以上します。この機はオール単板仕様であり、スモークド乾燥処理をすることにより中級機(20万以上)としての実力を備えています。音量・バランス・ハイポジでの音の伸びなどご満足いただけると思います。オール単板の良品「クラシックギター」をお探しの方にお勧めします。

         

         

        スモーク乾燥庫で30時間薫煙しました。燻すことによって木材内部の細胞変化が起り”音の伝達率”が向上しております。「音量が大きくなる」「音の立ち上がり速度が速くなる」「全体の剛性が上がることによってサスティーンが伸びる」など感じていただけると思います。

         

        トップは杉単板、サイド&バックはローズ単板、弦長650ミリ。ブリッジには”ダブルホール”が採用されています。ダブルホール仕様はサドルへ掛かるテンションが増すため、音の立ち上がりに優れます。

          

        弦高は12フレットで1弦2・5ミリ 6弦4ミリと低めに調整してあります。

         

        指板は黒檀が使われ、指板がサウンドホールへ向かってやや傾斜しています。簡易の”レーズドフィンガーボード”になっています。演奏性能向上のためというよりトップに対して角度を付けることによって、弦振動のエネルギーロスを減らす設計だと私は解釈しています。

          

        フレットはミディアムゲージ仕様で背が高く 早弾きに有利で、また左指への負担軽減になるでしょう。

         

        糸巻きは高級機には劣りますが、実用には問題ありません。マホガニーネックの中央には黒檀が挟んであり”木芯”として強度を稼いでいます。ジョイント方法は「スペイン式」でネックとヒールブロックが一体化しています。

          

         

        Top/Solid Cedar
        Back & sides/Solid Rosewood
        Fingerboard/Ebony
        Scale/650 mm
        Nut Width/52 mm

         

         

         

        Made in Spain

         

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        2018.11.14 Wednesday

        リペア ファイル その499

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          ギブソン J−200 /  ウルフ対策・スモークド乾燥処理・ネックアイロン矯正・フレットすり合わせ・ナット交換

           

          『共鳴』の症状があるとのことで、お預かりして点検しました。アコースティックギターで『共鳴』や『共振』が起る場合、考えられるのは『ウルフトーン』という現象です。ボディの固有振動数と弦の振動数が近いポジションに来ると「音が唸ったり」「小さきなったり」「大きくなったり」雑音っぽく聞こえるのです。ボディマスやウエイトをコントロールするのは現実的な対処でないので、「スモークド乾燥」処理を試してみることにしました。(以前スモーク処理して作製されたクラギがウルフが少ない事例があったので)

           

          ネックの反りもあったため「スモーク乾燥」する前にアイロン矯正しました。(その後、スモークしてネックを安定させたいため)

           

          スモーク庫の中にも火の粉が飛ぶことがあるのでギターを袋詰めしています。ヤニで真っ黒になった袋から、”ひょっこり”とヘッドが顔を出しました。

            

           

          全体に薄っすらとヤニが付着していますのでエチルアルコールで拭き取り、その後バフで全体をクリーニングします。

            

           

          フレットを軽く擦り合わせしてから、ピークをつけ直して、フレットを磨いておきます。

            

           

          ナット鳴きもあったので、オイルドボーンでナットを作り直しました。

            

           

          J−200のヘッドはレスポールよりも大きいですね。J−200はギブソンが得意としているアーチドトップ・ギターの姿に近いと思います。ボディシェイプもL−5とかに近いですし、材料もメイプルとプルースという組み合わせはマーチンになく、むしろヴァイオリン属に近いです。

            

           

          ボディマスはフラットトップギターの中で最大です。サイド&バックには見事なフレイムメイプルが使われていました。だれかがJ−200をキャデラックに例えていましたが、それもうなづけます。

            

           

          さて、肝心の『共鳴』ですが、わずか残っています。スティール弦のギターでは、あまり『ウルフトーン』の問題を言われないですが本来ギター属、ヴァイオリン属ともにあります。耳のいい方はそれを聞き分けるでしょう。注意するとエレキでもあります。

          完全に解決できないで依頼主には申し訳なく思っていますが、感想をいただきました。

           

          「音量、たしかに大きくなってます。音量もさることながら各弦の音が独立してハッキリとそれぞれが聞こえる様なメイプルらしいというかいい感じに調整していただいてるなと実感しました。ハイコードもしっかりとした音量を保てておりかなりいい感じです。

          共鳴、確かにまだ残ってますね。もうこればかりはこの子の個性と思う他ないですね。もう少し弾き込んでみてどう変わるかに期待します。
          弾いていくにつれて消えるとまではいかないまでも馴染んで邪魔にならないくらいにはなってほしいところですが。

          匂いについて思ってたよりも強烈に残るものなんですね。ただ嫌いな匂いではありませんし、何より確かにお酒に合いそうです。
          仕事帰りにバーボンとチーズを買って来てしまいました(笑

          見た目について、トップを見ると明らかに木目が詰まっているのがわかります。乾燥が進んだということなんでしょう。バインディングも焼けた色になっており、これは個人の主観もあるのでしょうが私的にはgood lookingですね。

           

          感想ありがとうございました。

           

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          2018.09.20 Thursday

          スモークド乾燥処理済み「ギブソンJ−45・Remodeling」の販売

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            2018年製の新品のギブソンJ−45を購入して手を加えました。改造(Remodeling)です。

             

            当工房の目玉「スモークド乾燥」処理を施してあります。30時間薫煙しています。これによりネックとボディの剛性がアップし、また煙と熱によって細胞レベルの変化が起り「音量がアップ」「サスティーン増」「音の伝達スピードが速い」等の効果が現れます。

             

            J-45のネックブロックとサウンドホールの間には一本のバーブレイシングと薄い板が入っているだけなので、つくづく弱いと感じていました。ここにマホガニーのブロック材を増設しました。「ネック元起き」対策です。

            また”ハカランダ材”を使い指板も張り替えることにしました。ネックの剛性アップとハカランダの倍音を欲したからです。

              

             

            指板面で「仕込み角度」をやや修正してサドル高を稼ぐよう計算しています。指板のアールはモダンタイプのように少し弱めに変更してあります。(10インチから12インチになるようなコンパウンド・ラディアス) フレットはJESCAR ミディアムジャンボの♯55090を打ってあります。

              

             

            元はグローバーのロトマチック式ペグでしたが金属率が高く硬質な響きになるので、ナチュララルな響きのヴィンテージ様式クルーソン3連ペグに交換しました。

              

             

            ナットは黒いタスクが標準装備でしたが、ここは牛骨に交換しました。サドルはタスクであるうえアンダーサドル式ピエゾが敷かれていましたので、ピエゾを外しサドルを牛骨に交換しました。(LRバックスのエレメントが装備されていましたが、電池ボックスはじめコントロール・エンドピンジャックなど外して”鳴り重視”で本来のアコースティックギターに戻してあります)

              

             

            ブリッジピンもタスク製でしたがエボニー製ピンに交換しました。サドル高も充分でブリッジピンからの立ち上げリ角度が大きく取れました。これにより弦振動を効率よくトップに伝えることができます。フレット端の処理は立ち気味で指板面を広く使えるようにしてあります。

              

             

            「スモークド乾燥」の影響で塗装面がやや痩せています。ピックガードは厚めでいかにもギブソンって感じです。

              

             

            爆音で遠鳴りするJ−45に生まれ変わりました。至宝の一品に仕上がったと思います。生鳴り重視のあなたの特別なGibsonにしませんか?

              

             

            ホームページ内のSHOPで販売致します。

            Remodeling GibsonJ−45  by 9notes      税込み¥349,000 (純正ハードケース付き)

             

            仕様

            GibsonJ−45 (2018年製)

            ・スモークド乾燥処理

            ・指板下補強

            ・ハカランダ指板に交換

            ・フレット/JESCAR ♯55090

            ・指板ラディアス/10~12インチアール(コンパウンド・ラディアス)

            ・ナット交換(牛骨)

            ・サドル交換(牛骨)

            ・ブリッジピン交換(エボニー)

            ・エンドピン交換(エボニー)

            ・糸巻き交換(クルーソン製3連ペグ)

            ・L.R.Baggs Element は外す(パーツは購入者に渡します)

             

              

             

             

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            2018.08.10 Friday

            「スモークド乾燥」処理済み JBタイプ ネック(フレットレス)の販売

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              「スモークド乾燥」処理済み JBタイプ ネック(フレットレス・ラッカー塗装済み・ナット有り)の販売致します。

               

              市販(国産)のジャズベース(JB)タイプ ネックを”スモークド乾燥”処理し、フレットレス加工しました。さらにオールラッカー塗装を施しエボニー製のナットも取り付けてあります。(弦溝も切ってある)

               

              JBタイプネック  販売価格(税込み・送料込み)¥49,800 (HP内のShop出販しています)

               

              JBタイプですのでPBタイプより細みのネックです。(ナット幅38.5弌法.┘椒法次聞檀)製のナットを取り付け .045 .065 .080、.100ゲージの弦溝が切ってあります。

                

               

              ネックエンド(ネックポケット寸法)は、15Fで60弌。横娃討韮僑粥ぃ悪弌.優奪エンドの厚さは26弌,任后

                

               

              フレット位置にはメイプル材を埋め込みんであります。

                

               

              スモークド乾燥で焼け色になりましたがムラがあるのでわずか着色して下地からラッカー塗装を施してあります。最終的には『3分の艶消し』でマット仕上げより艶があり、グロス仕上げより艶がないように仕上げてあります。

               

              ネック材は「スモークド乾燥」処理により、レスポンス・サスティーン・剛性に優れるようになりました。

              木材を燻す「スモークド乾燥」は、木材内のセルロースとリグニン・ヘミセルロースなどの物質を、煙の成分および熱によってセルロース間の結合水を減らしていく効果があります。その結果セルロース同士が結びつき強固になり、音の伝達率が上がると言われています。実際に弦振動の反応が早くなり(レスポンスが上がる)、結びつきが強固になった分 サスティーンが伸びるのを感じてもらえると思います。また剛性もアップするためネックがしっかり弦振動を受け止めてくれるようになるでしょう。

               

               

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              2018.07.09 Monday

              リペア ファイル その471

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                エピフォン Casino Coupe / スモークド乾燥処理・ブリッジ交換・アッセンブリー交換

                 

                先回のTakamineといっしょに「スモークド乾燥」処理したエピフォン・カジノクーペ。小ぶりなカジノです。

                 

                「スモークド乾燥」とは、ギターを煙で燻して音響効果改善を図る処理のことです。煙は熱を木材の内部まで運ぶことが知られています。そのときに木材の細胞になるリグニン・セルロース・ヘミセルロースの構造に変化が起り、音伝導率がアップし、剛性もアップすると考えています。(実際に科学的なデータを取っていませんが、効率的な乾燥方法として古くから行われた技術です。それを自作の窯で実験を繰り返し、その効果に確信を得ました)

                「スモークド乾燥」処理の効果として「音量のアップ」「反応速度が早くなる」「サスティーンが長くなる」などがあります。

                 

                30時間強「スモーク」したエピフォンカジノクーペ、全体にヤニが付着しています。それをエチルアルコールで拭き取ります。その後、バフで磨いて仕上げてます。

                  

                 

                ”チューンーO−マティック”ブリッジが装着されていましたが、オクターブチューニング幅が狭いため、もっと正確にチューニングできる”ナッシュビル・タイプ”のブリッジに付け替えました。ブリッジピンの径が違うため一端穴埋めしてから、穴を開け直しました。(ブリッジ下も中空でした。センターブロック付きよりもホローボディ率が高い楽器です)

                  

                 

                おそらく韓国製だと思われるアッセンブリ一式を米国製のものに交換しました。(CTS製のポット・スイッチクラフト社製のトグルスイッチ・同社アウトプットジャック・オレンジドロップコンデンサー・ベルデン社製配線材)

                  

                 

                弦はトマスティックのジャズギター用のフラットワウンドを張りました。ブランコテールピースなのでサスティーンは短め、これがジャズには合いますね。

                  

                 

                交換した”ナッシュビルタイプ”のブリッジ。サドルの可変範囲が広いのが特徴です。いろんな弦に対応できますね。(ジャズ弦の3弦は単線でない)ピックアップはドッグイヤータイプのP-90が載っています。ニッケルシルバーカバーは外来ノイズにも強いです。

                  

                 

                ヘッドは面長のタイプ。カジノのヘッドはこれじゃなきゃ。クーペはカジノより一回り小さいので取り回しが、エレキとほとんど変わりません。扱いやすくていい感じです。軽いし。

                  

                 

                出音は、オリジナルよりワンランクもツーランクもアップしています。生音も大きくなっています。上位モデル”エリーティスト・カジノ”にも負けないですよ。アンプを通してフロントを鳴らせばもうそれはアーチトップの音です。これはいいです。

                 

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                2018.07.05 Thursday

                リペア ファイル その470

                0

                  タカミネ / スモークド乾燥処理・フレットすり合わせ・ブリッジ裏補強(弦アース加工)・PU取り付け

                   

                  持参された2本の楽器をいっしょに「スモークド乾燥」処理をしました。その上でそれぞれ調整・リペア・改造を施しました。このタカミネはJapan製ではないですが、依頼主がずっと気に入って使ってくれていました。少々トップに膨らみが出ていましたので、そこも修正しました。

                   

                  30時間以上「スモーク窯(かま)」で薫煙してあります。仕組みは「スモークドチーズ」を作るのと同じようなものですが、楽器全体に煙が回るように位置や向きを変えながら行っています。そのため結構大きな窯が必要です。その中でニカワが溶けない程度に温度を上げて煙の量と熱量を調節しながら、薪をくべて火加減しています。

                    

                  うっすらヤニがボディに付着するのでエチルアルコールで拭き取り、そのあとバフで磨いて仕上げます。

                   

                  ブリッジの後ろやや膨らんでいます。それほど顕著でないので「トップ矯正」は行わず、ブリッジ裏のプレート部を補強しながら弦のボールエンドの位置を下げて、サドルに掛かる力を増やそうと考えました。同時に「弦アース」も取っておきます。

                    

                   

                  エレアコ化するためにLR baggsの「LYRIC」を取り付けることに。このときにブリッジプレートに付けた弦アースをプリアンプに繋ぎノイズ対策をしました。

                    

                   

                  使いこんであるのでフレットも磨耗しています。指板の狂いは出ていないので、フレットピークを低いフレットに合わせて削って行きます。轍(わだち)の底まで削りますのでフレットは台形になっています。それを三角ヤスリを使って、再び山頂のあるフレットに削り出します。

                    

                   

                  その後、ヤスリ傷を各種ペーパーを使って消しながらピカピカになるまで磨いておきます。

                   

                  「タカミネ」のドングリ頭のヘッドではなく、マーチンに似せたロゴとヘッド。一時、ギブソンとマーチンのヘッドを足して2で割ったようなヘッドをタカミネが採用していた時期(イーグルスが使っていた)がありますが、それとも違いますね。ドレットノートにカッタウエイは現在も定番。

                    

                   

                  ピックガードはマーチンのそれより少し角ばっています。

                  出音はスモークド効果で音量があり反応が早くなったとコメントを頂きました。特筆ものはそのノイズの少なさでエレアコに弦アースの効果は大です。エレキでは当たり前なんですけど、エレアコではまだまだ少数派です。

                   

                  次回はもう一本の「スモークド乾燥」処理したギターのリポートです。

                   

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                  2018.02.24 Saturday

                  リペア ファイル その438

                  0

                    The Flatiron    Aタイプ・マンドリン / 「スモークド乾燥」処理・フレット交換

                     

                    先に紹介した「津軽三味線の棹・駒」といっしょに燻煙したフラットマンドリンです。”ブルーグラス”には欠かせない楽器です。デビット・グリスマンやパンチブラザースのクリス・シーリが有名ですね(ほかは私が知らないでだけですが・・・)あでやかな音色で”華”がある楽器です。今回はこの個体のポテンシャル(存在能力)を引き出すべくスモークしました。

                     

                    30時間燻したあとは、全体にヤニ成分が付着しているのでエチルアルコールで拭き取り作業をします。それからバフで磨いてクリーニングします。

                       

                     

                    指板が波打ちしていたのとフレットが磨耗していたので「フレット交換」することに。(スモーク前にフレットを抜き、指板に煙が浸透しやすい様に段取りしてあります)指板を調整して、フレットはドイツ製のジェシカー♯43080を打ち込みました。トラスロッドがないので弦を張った状態でベストなネックを”フレットタング”(フレットの脚)を調整して作り出します。

                      

                     

                    打ち込み終わったらフレット全体のピーク(頂上)を整えて、再び頂点をヤスリで切り出し 最終的にはペーパーでヤスリ傷を磨き落としてピカピカな状態に仕上げます。

                      

                     

                    4コースで各コース同じゲージの復弦で構成されています。調弦は各弦”4度”間隔で細いゲージから『E-A-D-G 』、バイオリン属と同じです。スムーズなフィンガリングを目指してフレット端も面取り処理してあります。

                      

                     

                    フラット・マンドリンには”Aタイ”と”Fタイプ”があり、Aタイプは肩の張りのない丸っとしたデザインで、Fタイプは低音側にバイオリンのネックの渦巻きを模した”スクロール”があるデザインです。フラット・マンドリンに対してバックがイチジク状の"ナポリ型"があります。昭和時代に流行った「ギタマン(ギター・マンドリン クラブ)」は、このナポリ型を使い主にクラシック畑の演奏をしました。マンドリン属は世界中にいろんなパターンで広がって興味深い楽器です。

                      

                     

                    さて、完成したスモーク済みマンドリンを演奏された依頼主からメールを戴きました。

                    マンドリンの感想を書きます。

                    そもそも音がどう変化するのか関心がありましたが、しばらく弾いてなるほどと思いました。
                    この効果を私なりに表現するなら、楽器の材質が変わるわけではないので、

                    スプルース、メイプル、はそのままでその材の
                    最も良いコンデイションのものが奇跡的に組み合わさって、できた1本という感じでしょうか。

                    具体的な音の感想ではマンドリンはギターほどサステイーンが長くなく、

                    特にフラットマンドリンはぺらぺらになりやすいのですが、

                    音一つ一つが立体的でいわゆる粒が立っている状態です。

                    輪郭もしっかりしていて腕さえあればかなり説得力のある演奏になると思いました。

                    より一音一音にこだわった丁寧な演奏を心掛けねばと。

                    マンドリンを弾いていながらマンドリンの良い音ってどんな音かいまいち分かりませんでしたが、

                    今回の経験でイメージすることができました。

                     *

                    感想ありがとうございました!

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                    2018.02.20 Tuesday

                    リペア ファイル その437

                    0

                      津軽三味線の棹・駒の”スモークド乾燥”処理

                       

                      Aタイプのフラットマンドリンに「スモーク乾燥」を施す際に、「試しにこれもやってみたい」とお持ちの津軽三味線の棹と駒もスモーク庫に入れて燻しました。ギター・ヴァイオリン属は扱いますが、日本の楽器はほとんど手にしたことがなかったので、興味津々で細部まで観察させてもらいました。

                       

                      津軽三味線は”太棹”でほかの三味線より(弦長が)長くできています。棹は3分割できて持ち運びが楽になっている(らしい)。この棹は”紅木(こうき)”と呼ばれるインドカリン属の硬い木でできています。希少木で高級材です。棹には2枚のホゾがありそれを保護する木製の蓋が装着されていました。

                        

                       

                      ホゾの構造。日本建築の技術をそのまま応用したホゾで、ホゾ穴には金属が埋め込まれています。この小さなホゾに強度と精度が求められる技術が集められています。ほれぼれする仕事です。

                        

                       

                      それをスルスルと合わせて行くと・・

                        

                       

                      上下左右”クリアランス・ゼロ”でぴったり収まりました。驚愕の加工技術!!!(クリアランス・ゼロで収まるなんて考えていなかった。ほんのわずか段差ができると思っていたから・・)

                       

                      ヘッドと糸巻き。一体構造ではなくここも継ぎ木の技術で加工されていました。津軽三味線の太い弦には”さわり”という「ビョーン」とシタールのようなビビリ音が出るような突起があります。この出の加減を裏側のネジでやれるようになっていました(特許のようです)。

                        

                       

                      胴の中を貫通する構造です。バンジョーに似ていますね。今回は胴はスモークしていませんが、胴には犬の皮がニカワで張られているそうです。ホゾを繋ぐと一本の棹になりました。つなぎ目を感じさせません。スゴイなぁ。

                        

                       

                      こちらは駒です。いろいろな素材があるそうですが、これは”竹”でできています。弦の当たる下側は中空になる加工が施されていて、この技術力に唖然・・・ ”竹”の表面はガラス質で 刃物で削るにもよっぽど切れないと刃が立ちません。その素材にこのような細かい加工が。日本の加工技術の高さよ。

                        

                       

                      姿もうつくしいです。軽さと強度を合わせ持っています。駒の理想系だと思わずにはいられません。

                      後日マンドリンの引渡しの日に、セットアップした津軽三味線をお持ちくださいました。少し演奏してくださいましたが、その音量に驚きました。ギターより音が大きいんです!これが津軽三味線なのか!バチで叩くように弾くので、そのパーカッシブなサウンドも驚きでした。スモーク効果はいかほどか、評価を下すにはもう少し時間がかかりそうです。

                       

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