2017.06.25 Sunday

リペア ファイル その323

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    マーチン・カスタム Shop 00−18 / ネックアイロン矯正・フレットすり合わせ・ナット再整形

     

    バック&サイドに見事な”キルティッドマホガニー”が使われているCustom Shopの00−18です。指板やブリッジの黒檀も真っ黒で”オオトロ”ですね。それに軽い!乾燥状態がいいのと塗装が薄めなのが解ります。鳴る条件は整っています。

      

    ただ、ネックが「元起き」状態で弦高が高めでした。14フレット以降が起きて来て元々の仕込み設定が変わってしまい弦高が高くなってしまうのですが、同時に伸びやかなサウンドが失われます。

     

    ネックアイロンでネックの仕込み角度を矯正してやります。木材は熱によって曲がる性質を利用するのです。「指板とネックの間の接着剤を弛めて反らす」という説がありますが、”曲げ木”の理論は、木工では一般的で後は技術の問題です。

      

     

    数度のアイロン矯正で仕込み角度をついたら、フレットピークを整えるためフレットの「擦り合わせ」をします。ネックはやや逆反させてあるので、弦の張力が掛かって、真っ直ぐになった指板を想定して擦り合わせてあります。

      

     

    フレットピークをヤスリで削り出して、その後磨いてきれいに仕上げます。弦とナット溝の接地面が広かったので、ナットの形を鋭角にして接地面を狭くしています。クリアな出音を求めてそうしました。(あまり鋭角にして接地面が狭くするとナット溝が弦によって磨耗するスピードが速くなるので、ほどほどにしてあります)

      

     

    弦を張りチューニングした状態です。サドルに手を加えないで弦高を下げることに成功。(それだけ仕込み角度が付いているということです)ジョイント部が真っ直ぐになり、音に”張り”が戻ります。

     

    再整形したナット。

    ロングサドルの”出シロ”も十分確保できていて、ブリッジピン穴からの立ち上がり角度もいいでね。

      

     

     

    口輪にヘリンボーンが入り、ピックガードはべっ甲柄、ポジションマークはドットではなく花柄のようなデザインで カワイイ、特別仕様ですね。

      

     

    ”00”は弦長が短いですが、仕込み角度を適性に修正したため、しっかりと振動を受け止められるようになり、ダイナミックレンジが広くなって表現力に幅が出るようになりました。

     

    マーチン・ギター修理 インデックス http://9notes.jugem.jp/?eid=307

     

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    2017.06.17 Saturday

    リペア ファイル その321

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      ギブソン J-45 / ネックアイロン矯正・フレット擦りあわせ・ブリッジプレート増設・ブリッジ上面削り・ブリッジピン穴修正

       

      楽器が到着してすぐにトップの膨らみがどの程度進行しているか確認しました。アコギのトップには「ドーミング」と言って、元々膨らみが付けられています。この元々の膨らみが弦の張力によって、さらに膨らんで来る現象が起きます。それがどの程度が進行しているのかを判断するのですが、こらが案外むずかしい。ひとつの判断材用は「弦高が高くなって来た」ですが、これもネックの状態と合わせて考えなくてはなりません。

      今回のケースでは、トップの膨らみの進行はそれほどでもなかったですが、その傾向は見られましたので「トップ矯正」までは行わず、「補強」にとどめることにしました。

       

      ネックは元起きしていたので「ネックアイロン矯正」して仕込み角度をつけ直します。これで弦高を下げることができます。

        

       

      「アイロン矯正」後はフレットを「擦り合わせ」てフレットピークを整えます。その後 各種専用ヤスリを駆使してピークをつけ直しておきます。

        

       

      ヤスリ傷を落とすために「ペーパー」の番手を変えながら磨いて行きます。そのときにフレット端を少し落とすと、ネックを握ったときにフィットします。ちょっとのことなんですが、この辺りが「フレットワーク」のコツですか。

       

      ブリッジプレートを増設します。補強の意味に加えて、弦のボールエンドの位置を下げてやってサドルへ掛かるモーメントを増やす意図です。材料はホンジュラスローズを選択。強度とカラッとしながらパンチ力あるサウンドを狙い選びました。

        

       

      「仕込み角度」を変更したので、サドルを削ることなく弦高を下げることに成功していますが、若干ブリッジピン穴からサドルトップまでの立ち上がり角度が乏しいので、ブリッジの表面を2ミリ削って(貝が入っているのでギリギリの寸法)落としました。その後ピン穴を修正します。

        

       

      弦の誘導溝を拡張します。こうするとサドル近くから弦が立ち上がり、角度が深くなりサドルに掛かるテンションが増えます。

        

       

      弦を張っても真っ直ぐなネック。これで弦振動のバイブレーションをしっかり受け止めることができ、不要な減退をさせません。

        

       

      依頼主から「鳴り」の改善について驚きの声を戴きました。よかったです。ブリッジプレートの増設でやや音が硬くなる傾向にありますが、音量増など振動効率をアップすることで「鳴り」に変化を起します。なんと言ってもJ−45は、ガツンと迫力ある音が欲しいですからねぇ。

       

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      2017.06.13 Tuesday

      リペア ファイル その320

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        フェンダー・Japan テレキャスター / PU取り付け加工・5wayスイッチ取り付け・フレットすり合わせ

         

        ビグスビー・ライセンスのトレモロ(フェンダーのログが入っている)が装着されているフェンダージャパンのテレキャスター。シンラインのようなFホールはシールでダミーですが、いいセンスですね。ゴトー製のP−90ピックアップを増設する改造です。同時にビビリ音 解消のため「擦り合わせ」も行います。

         

         

        ピックガードにP−90用に穴を開ける用意。そのとき位置決めのため、ホールピーズの位置がずれないように 弦を張った状態で一度確認しておきます。

         

        ピックガード用の穴掘りテンプレートより一回り大きい本体加工用のテンプレートを装着してザクリ加工します。P−90は本体直付けタイプなので、PU下にアジャスタブル用の硬質ウレタンを敷きます。その分も計算して掘り込んであります。

         

        PUが一つ増えたため「3wayスイッチ」を「5wayスイッチ」に交換する必要があります。米国製パーツを使うためビス穴の径が大きくなるので、穴をボール盤で開け直しています。

         

        ピックアップカバーのくり抜き加工も本体ザクリ加工も終え、バラしておいた他の部品も組み直します。そこにP-90を取りつけて配線引き直しをしました。

          

         

        ロッドを調正し、フレット浮きを確認し、フレットを「擦り合わせ」ています。フレットピークに若干もバラつきがありました。エレキはチョーキングをするので音詰まりがないよう、高音域はややフラットに擦り合わせのがミソです。その後 フレットピークを専用ファイルを駆使してつけ直し、ヤスリ傷をペーパーの番手を変えながらピカピカになるまで磨き上げます。

          

         

        完成! ナイス・ルッキング!

          

         

        「ゴトー」の名はペグで有名ですが、ピックアップ・メーカーの「ゴトー」は別会社です。国産のPUメーカーでいいPUを生産しています。そのクオリティーはダンカンに負けてないです。これからも優れたPUを作り続けてもらいたい。頑張って!

         

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        2017.06.09 Friday

        リペア ファイル その319

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          スズキ・クラシックギター / ネックアイロン矯正・フレットすり合わせ・ペグ交換・簡易弦留め(チップ)作製

           

          シニア世代のギター人口が増加してるデータが出ていました。今回の依頼者も学生時代に購入したギターを再び使うとのことで、メンテナンスを依頼されました。糸巻きがもうダメでしたので「ペグ交換」が主でしたが、あちこちダメージが見受けられます。新しい楽器を購入した方がお安くなることもお話しましたが、このギターに思い出が詰まっているのでしょう、できるだけのことはさせてもらうことにしました。

           

           

          まずは弦高が12Fで6ミリ以上あったので、「ネックアイロン矯正」で仕込み角度を変更して弦高ができるだけ下げることに。ヒール部にダメージがあり、あまりきつい角度変更は無理だったので ぎりぎりのところまで圧力を掛けています。

           

           

          「すり合わせ」の図。元々のフレット打ちに波があったのか、結構 擦りました(70年代の楽器はほとんどそんな感じです)。ふたたびフレットピーク(山頂)をつけ直します。その後ペーパーの番手を変えながら磨いて行きます。

           

            

           

          糸巻き(ペグ)をゴトー製のペグに交換しました。これでスムーズなチューニングができて気持ちがいいですね。

           

           

          サドルをギリギリ下げて弦高を12F 6弦4.5弌。姥坑.5个法ただそれではサドルへのテンションが弱くなってしまうので、急遽簡易の「チップ」を作って対処することにしました。ホームセンターの電気部門で以前購入したコードをつなぐアルミ製の「圧着スリーブ」を使って自作しました。スリーブに弦用の穴を開けてバリを取るだけですが・・・

           

            

           

          これでシングルホールのように 弦穴へ直接 弦が通り、サドルピークとの落差が付いてテンションが稼げます。従来の巻き方では高音側はテンション不足になってしまいます。今回これを解消するための部品が「チップ」です。

           

            

           

          全体をバフで磨いて、指板もクリーニングしました。楽器がきれいになると演奏意欲も増しますね。依頼者にとって新品を購入することはさほど難しいことではないと思いますが、「モノを増やしたくない」とのお気持ちは察することができます。古いギターを大事にすることは、人生を肯定することでもある と思いました。

           

           

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          2017.06.05 Monday

          リペア ファイル その318

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            ギブソン ES -335 TD / オーバーホール(オーバーラッカー塗装・ピックアップ交換・スイッチ交換・フレット交換・ナット交換・一部配線引き直し・金属パーツ磨き)

             

            クローゼットで長年眠っていた”ギブソン335”を復活させるお手伝いをさせてもらいました。この”335”はスペシャルな「TD」モデルでビルローレンス氏によるPUが搭載されており、左肩の2wayスチッチにより「コイルタップ」されるような仕様になっていました。通電してチェックしたらフロントPUが断線していて残念ながらそれが使えなくなっていました。

             

             

            全体のオーバーホールをすることになりましたが、フレットも磨耗していて”ペタペタ”だったので「打ち換え」することになりました(ジェスカー♯57110に交換)。ジャンボフレットでしたが、低くてまるで「フレットレスワンダー」のようでした。同時にナットも新調します。

             

              

             

            塗装に入る前に「スチッチ交換」するため”埋め木”しておきます。(塗装前にフレット交換・ナット交換・埋め木などの作業を終えておくと、塗装後の仕上がりがいいためです。仕事は「段取り」命です)

             

              

             

            細かい傷を落とし、大きな傷も塗装を盛って修理し、全体にラッカーを吹き付ける「オーバーラッカー」塗装に入ります。米国の修理ではときどき見かける「再塗装の技術」ですが、まったく新品にするのではなく古いギターのいいところを残しつつ「化粧直し」するのがミソです。

             

             

            5回ほどラッカー塗装を施し、乾燥後研磨してバフ磨きします。金属パーツは”ピカール”で錆びや汚れを落としておきます。古色や侘びは残しつつ装いは美しく・・・「顔のシワは年輪の深さとして隠さない一方、身だしなみは洗練されていた 前米国大使・キャロライン・ケネディーのように」

             

              

             

            ピックアップをフロントをセイモア・ダンカン「JAZZ」 リアをセイモア・ダンカン「JB」に交換しました。これをオリジナルと同じく2wayミニスイッチ一発で同時にコイルタップして、ハンバッカーをシングルに切り替えられるように配線しました。

             

             

            組み込んで完成(335タイプはFホールから配線するので、なかなかやっかいです)。70代の”335”はブランコテールピーズ仕様で内部ブロックもスプルースでできていました。サスティーンは伸びませんがジャズギターと同じく歯切れよく小気味いいサウンドを醸し出します。

             

               

             

            2つのピッアップを同時にハム⇔シングルに切り替える仕様をはじめて経験させてもらいましたが、実用度は高いです。これには正直驚きました。たしかに片方だけハムバッカーにして、これのハーフトーンを愉しむことはないですよね。ハーフトーンを選ぶならば2つのPUは同じ仕様でないと意味がありません。この切り替えならば間違いないです。

             

              

             

            フレットはオーバーバインディング。ネックは335では珍しいメイプル3ピースです。ペグはなんとロック式です。ゴトーの”マグナムロック”は有名ですが、それよりもずっと前にギブソンで実用化していたのですね。

             

              

             

            チェリーレッドの335。ブルースマンの憧れですね。最近は若いプレーヤーにも335の魅力を解ってもらえるようでうれしいです。ソリッドギターには出せないファットなサウンドがチョーキング一発にも こもります。

             

             

             

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            2017.06.01 Thursday

            リペア ファイル その317

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              SAKURAI  MASAKI No15 /  フレット交換(リフレット)・ナット交換・サドル交換(オフセット加工)

               

              日本のクラシックギター業界を牽引する桜井正毅氏製作の作品。叔父の河野賢の工房を受け継ぎ、現在も意欲的なギターを生み続けています。

               

                

               

              左手の負担軽減のためフレットを背の高いものに交換して欲しい、との依頼で、当方のブログを観てくだりメールを下さりました。欧米のクラシックギターで世界では、このような理由でリフレットすることが多いそうです。慣れるまで多少戸惑うかと思いますが、背の低いものより軽いタッチで出音するので、左手の握力の負担が軽減に役立ちます。

               

              フレットを抜いて指板を調整します。クラシックギターはトラスロッドがないため、フレットが入って指板が真っ直ぐになるように指板を削ります。同時に仕込み角度も調整し、サドルの高さが適性になるように考えながら削って行きます。

               

                

               

              フレットの脚(タング)を調整しながらフレットを打ち込んでいます。フレットの端を処理してフレットピークを揃える「すり合わせ」を行います。ほとんどピークが揃っているので僅かにフレットの頂上(ピーク)をなでる感じです。それでもこの作業はビビリ音を抑えるのに大切な作業です。フレットを打ったら「すり合わせ」しない製作者も居られますが、私はこの作業を入れた方がいいと考えています。

               

                

               

              頂上が尖っていないといけませんので、専用ヤスリでピークをつけ直しています。ナットも新調します。この桜井ギターのペグはゴトー製で、アルミのポストのものが使われています。アルミは音の伝達性がよく そこを狙ってこの素材が選ばれているのでしょう。

               

                

               

              完成。フレットはピカピカの磨きあげてあります。弦を張ってネックが真っ直ぐになるように仕上げるのが腕の見せ所。

               

                

               

              サドルも新調しました(弦高は低めの12Fで6弦3丕姥坑押ィ記弌法8皇未靴侶蠅一本のシングルホールですが、依頼主によりテンションが掛かるように「チップ」が取り付けられていました。ダブルホールもそうですが、サドルへのテンションが増えると音量とレスポンスの向上が期待できます。

               

                

               

              ズーンと腹に響く低音と煌びやかな高音が印象的です。河野・桜井ギターの木材は一級品なので時間とともに成長してくれると思います。名工のところに良材が集まるのは、世界中どこででも同じです。

               

               

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              2017.05.24 Wednesday

              リペア ファイル その315

              0

                ホセ・ラミラス 1980 clase 1a  / 裏板割れ補修・修理

                 

                側板に”シープレス”と”ローズ”が張り合わせてある「ラミレス」は高価ですが、その出音から価格うんぬん抜きに納得できる楽器です。裏板に杢目が複雑なローズ(ハカランダに似たローズだと思う)を使ってありましたが、乾燥で割れてしまっています。『裏板割れ』の補修作業内容です。

                 

                 

                中央に長い割れ(下から上まで)、左右に腰の部分まで割れが入り、計3箇所の割れ修理です。まずは”過”乾燥になった板を製作時の含水率まで戻すことが大切です。湿度管理をしながら時間をかけて(今回2週間くらいかかった)割れ部が自然にくっつくようにします。

                 

                  

                 

                割れ部を接着します。ラミレスは「ユリア樹脂塗料」だと書いてある資料があったので、今回はエポキシ系の接着剤を使用しました。これが「ニス」だったらこうはいきません・・・

                 

                 

                接着後に一回だけ塗装しました。これも「ユリア樹脂塗料」だったので上塗りが可能でした。ユリア樹脂はウレタンのような塗料でした。ただとても薄く仕上げてあります。

                 

                 

                左右の割れはきれいにくっ付きましたが、中央の長い割れ部の真ん中で、少し段差ができてしまいました。複雑な杢目のひずみが一箇所に集まり、どうやっても面一(つらいち)にならなかったのが残念。塗装してそれを解消しました。

                 

                  

                 

                杉トップでほかは、上質な木材を組み合わせてあり気品があります。スペイン製のクラシックギターは、ネックの仕込みが「ネックとネックブロックが一体構造」になっています(スペイン式という)。ドイツ式はダブテールジョイントになっており、スチール弦のアコースティックギターと同じ構造です。このジョイント部の違いが、音の違いにも現れたりします。

                 

                  

                 

                スペイン製のギターとドイツ製のギターはそれぞれ特徴があり、明るいスペインの楽曲にはスペインの楽器が、ガッチとしたクラシックな構成の楽曲にはドイツの楽器が合うと言われています。ただ、”名器”はそれを越えていますが・・・

                 

                 

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                2017.05.19 Friday

                リペア ファイル その314

                0

                  マーチン D−28  / フレット交換(リフレットともいいます)・ナット交換・サドル調整

                   

                  比較的新しいマーチンD−28ですが、よく弾き込んであります。ナット溝が擦れて低くなっていたところもあったので「ナット交換」を先に打診されましたが、フレットもややあやしいということで、状態を見てからになりました。やはりフレットがだいぶり減っていましたので「交換」となりました。当工房ではナット交換代金はフレット交換代金に含まれているので、このタイミングの方がお得です。

                   

                   

                  フレットを抜き去り指板面を真っ直ぐに調整してあります。その後フレット溝の底のカスを取り除いたり、切り直したりして「フレット打ち」の下準備をします。フレット溝幅を計測して、フレットの脚(タング)幅を専用の道具で 少し大きめになるように調整します。この幅具合でネックの”逆反り”を作ります。ですが指板材の個体差やネック本体の強度などいろいろ考慮しないと、狙ったネックの反りになってくれません。ここがリフレットの難しさです。

                   

                    

                   

                  このマーチンの指板ラディアスは、最先端のラディアスになっていました。ナット側は16Rで指板エンドは20Rでした。つまり「円錐状の指板(コンパウンド・ラディアス)」であったのです。これは画期的です。これまでは「円柱状」指板であったので、ナット側も指板エンドも同じR(ラディアス)でした。この楽器はこれが進化していたのです。多くのアコースティックギターメーカーは製作状の理由(主に経済的理由)から、本来は「円錐状」のRが理想の指板だと解っていても、「円柱状」の指板を作り続けています。マーチンはここを改めたということです。つまり設備投資したのですね。やるねマーチン社、どのメーカーも設備投資に慎重なのに攻めましたね。

                   

                    

                  (右写真)指板のフレット溝を切り直したので、少しフレットタング下に隙間ができています。それを黒檀カスをボンドで溶いたもので埋めています。

                   

                  手打ちでフレットを打ち込んでから、「すり合わせ」をし 半丸ヤスリで「ピークつけ」し ペーパーなどで「磨き」上げます。それからナットを牛骨で新調しました。弦のゲージに合わせてフレット溝を切ります。

                   

                    

                   

                  完成。ナットは弦をチューニングするたびに 溝が磨耗してほんのわずかですが擦り減って行きます。ですので、ナット溝がフレットピークより低くなってしまうことがあります。そうなると開放弦でビッビってしまいます。こうなると「交換」になるのです。

                   

                   

                  弦を張って真っ直ぐになった指板。コンパウンドラディアス指板ですとサドルRもその計算に合うRを与えてやらないといけません。なので22〜24アールになっています。(今回はわずかサドル下を調整しただけでした)

                  指板上で仕込み角度を少し強くしたため、サドル高が同じでも弦高を下げることが可能でした。

                   

                    

                   

                  「マーチン社」は、老舗として変わらない(変えない)ことと、老舗としてチャレンジしていくことのバランスが問われるメーカーでしょう。どこの国の老舗メーカーでも商売が安泰ということがない時代です。ブランド に依存することの怖さがありますね。

                   

                   

                  関連ブログ : マーチン・ギター修理 インデックス

                   

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                  2017.05.16 Tuesday

                  リペア ファイル その313

                  0

                    マーチン D−28  / バインディング剥がれ補修・ペグ交換・弦高調整・各種調整

                     

                    店頭で試奏し選んだギターで、名より質を選んだ結果が『マーチン』だったようです。たしかに軽く弾いても反応がいいです。裏板の腰の部分のバインディングが剥がれていました。エンドピン周りのバインディグも少し浮いてきています。セルは経年変化で縮んで来るのでこういう現象が起きます。

                     

                     

                    3プライの途中からと元からと縮んで接着力が落ちて切れています。ここのバインディングが外れることは、よくありますね。どうしても腰の部分で浮いてしまうのです。一旦切って再接着する方法もありますが、今回はドライヤーで熱を加えて伸ばしてから、接着する方を取りました。

                     

                      

                     

                    作業に先立ちウエストを押さえる”ジグ”を作っておきます。

                     

                       

                     

                    マスキングテープで本体を養生して、ドライヤーで熱を加えてバインディングを弛めて、バインディングの隙間に粘性の低いエポキシを入れてテーピングして固定。テーピングだけではバインディングの内側が浮いて来るので、そこを先にジグで押さえて止めておきます。こういう手際が大事なケースでは、一度デモンストレーションを行って作業がスムーズに行くか確認してから行っています。(エンドピン周辺も修理しました)

                     

                      

                     

                    クリーニングして完成。バインディング専用接着剤を使う手もあるのですが、あれはさらに縮む可能性もあるので今回はエポキシを使いました。接着剤の選定はケースバイケースで使い分けています。

                     

                     

                    変則チューニングも使うとのことで、ギヤ比が18対1の『ゴトー510』ペグに交換しました。これで細かいチューニングに対応できます。以前観た『石川鷹彦』氏は”ギブソンJ−45”に『ゴトー510』を付けていました。耳のいい方は、結果こういうチョイスになるのですね。(510とは5(ご)10(とう)という謎掛けで、このメーカーのフラッグシップモデルになっています)

                     

                     

                      

                     

                    弦高がやや高めだったので、サドル調整とナット溝の調整・ロッドの調整など「弦高に関する部分」を各種調整しました。微調整でもテンション感や音の立ち上がりに影響を与えます。弾き手が敏感だと解ってもらえので調整のし甲斐があります。

                     

                     

                     

                    関連ブログ : マーチン・ギター修理 インデックス

                     

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                    2017.05.13 Saturday

                    リペア ファイル そのファイル312

                    0

                      グレコ MRー800(or 600) / ブリッジ・アース加工 アウトプットジャック交換・ポット洗浄

                       

                      1970年代に製造された「グレコ/Greco」のアーティストモデルです。バッド・カンパニーのギターリスト『ミック・ラルフス』のモデルとして作られたようで、依頼主は80年代の入手したとのこと。ダブルカッタウエイですが、ギブソンのそれとはデザインが違います。まさにオリジナルモデルですね。 「弦高が高い、ノイズが出る」のでチェックしました。

                       

                       

                      細部まできちんと加工されているのがキャビティ内の処理で解ります。バダスタイプのブリッジが標準ですが、バダスは弦高調整がやりにくいうえ、ブリッジが前掛かりになって弦高が高くなる嫌いがあります。これもそうでした。おまけに独自のアース取りがされていて、ブリッジが下げられません。(左写真のPUの下の楕円のパーツにアースが落ちていて、そこがブリッジと接触するようになっている。そこを外せばブリッジをさらに2ミリ下げることが可能)アースはスタッドを抜いてそこで接触するように加工しました。

                       

                         

                       

                      楕円パーツを外してもまだ弦高が高いのでサドルの弦溝を「切り直し」をして弦高を下げました。バダスタイプのブリッジは、ブリッジとテールピーズが一体型なので 弦が『つ』の字状に留まる構造で、モーメントにより”後ろ”が上がってしまうのです。そのため設定より弦を張ると弦高が高くなってしまいます。

                       

                         

                       

                      キャビティ内は友人のリペアマンによりすでにきれいに配線引き直しとシールド加工がされていました。(Good job!)ノイズの原因はアウトプットジャックの劣化でした。このパーツは消耗品とお考えください。ジャックの抜き差しでそのたびにわずかずつ磨耗するのですから。

                       

                         

                       

                      ヘッドもオリジナル。「グレコ」は「神田商会」が「フジゲン楽器」にOM生産させているブランドです。この時期に「ブギー・Boogie」とかオリジナルを連発させていましたね。

                      ネックはマホガニーでなくメイプル、ヘッドにはボリュートがついていてネック折れにも強い構造になっていました。

                       

                         

                       

                      ハイポジションまで弾きやすい深いカッタウエイ。ボディ形状はややボトムのボリュームがあります。2V2Tの配置は、ギブソンのフロント・リアの位置関係と逆ですね(逆台形)。レスポールよりも裏板材のマホガニーが薄く作ってありました。

                       

                         

                       

                      P−90ピッアップのズ太いサウンドが抜けよく響きます。ハンバッカータイプもあるようですが、ルックス的にはこのタイプの方がオリジナル感が強く感じます。 ”ジャパン・ヴィンテージ”としてこれからさらに希少性が高くなるでしょう。

                       

                             

                       

                      「Free」は好きでよく聴きましたよ。ポール・ロジャーズのまったりした歌と、スローなテンポがパンク世代には却って新鮮に感じました。「バッド・カンパニー」は現役バンドですが、ミック・ラルフスは病気でリタイヤされたようです。

                       

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