2018.08.18 Saturday

リペア ファイル その480

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    マーチン HD-28 / 駒外し再接着・フレット交換・フレット端丸め処理・ロングサドル交換・ナット交換

     

    ブルーグラス奏者のHD-28。ロングサドルなので28Vかも知れないです。”H”はバインディングが”ヘリンボーン”で、”V”は”ヴィンテージ”仕様だったと思います。Xブレーシングに関して”スキャロップ”仕様だとか”フォワードシフテッドブレイシング”仕様だとかマーチンファンでは重要視されがちですが、実際は自然木であるトップの剛性は個体差が大きいので、柔らかいトップに対しては強い力木、硬いトップに関してはフレキシブルな力木になっているといいのです。

     

    駒が浮いていたので一旦外して再接着することに。過去に一度修理痕がありました。

      

     

    熱をかけて外したあと、駒面とトップ面がうまく噛み合うように整形し直してから接着しました。

      

     

    フレットが減っていましたので「フレット交換」します。私は”台直し鉋”使っておおまかに指板の修正をした後、ペーパーを貼ったブロック材で指板調整しています。(”台直し鉋”というのは、刃が直角に立って仕込んであるので堅木の整形に向いています)

      

     

    フレットを打ち込んだあとは平ヤスリで平面性/ストレートを出して、半丸ヤスリでフレットピークに山頂をつけ直し、各種ペーパーで磨いておきます。

      

     

    フレットが新調されるとフレット高とナット弦溝の関係が変化するので、ナットは新調します。マーチン・ヴィンテージタイプのナットは底面が斜めになっています。

      

     

    「ブリッジ貼り直し」と「フレット交換」に伴いサドル高の変化があったので、ロングサドルも新調しました。オリジナルのサドルは溝に接着されていますが、交換したサドルは取り外しが効く用に接着してありません。そのためサドル端が駒と一体になって”面一”を再現できないのが残念です。(牛骨先端が欠けてしまうんです)

      

     

    フレット端は「ボール状に丸く」加工してあります。引っ掛かりがなくスムーズな運指ができます。

      

     

    この個体はネックがやや弱いと感じたので、フレットタングをややきつめに仕上げてネックの剛性をアップさせましたが、それ以外は全体にバランスのとれたマーチンらしい個体でした。

    依頼者からは「3.4弦のふくよかで長いサステイーンのきいたサウンドはマーチンならではないかと思います」との感想を頂いています。

     

    関連ブログ:マーチンギター修理インデックス:http://9notes.jugem.jp/?eid=307

     

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    2018.08.14 Tuesday

    リペア ファイル その479

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      アリア W−40 /  ネックアイロン矯正・フレット知り合わせ

       

      最近、当工房にちょいちょいやって来る70〜80年代の”アリア”製のアコギ。マーチンコピーなんですが、それらを見るとよく出来ているので感心しています。”アリア=荒井貿易”は自社工場を持たないメーカーですが、OEMメーカーを使って質の高いギターを作り続けています。また荒井貿易の創業者”荒井史郎“氏は日本のギター業界にとって重要な人物で、スペインのクラシックギターを輸入したり、日本のギターを海外に紹介したり業界黎明期に尽力されました。

       

      ネックがずい分反っていましたので、ネックアイロン(ネックヒーターとも言う)で熱をかけて逆反りさせます。木材は熱によって曲げることができます。インレイがセルだったので少しやせた(?)か、浮いた部分を接着しました。

        

       

      弦によってフレットに「轍(わだち)」ができていたので、一番底まで平ヤスリで擦って落としてフラットにします。低くなったフレットは三角ヤスリによって再びフレットピーク(山頂)を削り出しておきます。それを全てにフレットに実行し、その後はヤスリ傷がなくなるようにペーパーで磨きます。

        

       

      ペーパーが指板に当たっても傷がつかないようにマスキングテープでガイドしてあります。

       

      アイロン矯正によって弦高を下げることができました。

        

       

      全体をバフ磨きでクリーニングしてあります。(いつもサービスでそうしていますよ)裏は3ピース構造です。(合板製ですがそのように作ってあります)

        

       

      ヘキサゴン・インレイにトップ周りにも貝に似せたセルが巻いてあります。ブリッジもマーチンぽい。

        

       

      昔はアコースティックギターをフォークギターとかウエスタンギターとか呼んでいました。このロゴはそのまま表現してますね。ヘッド側にロッドカバーを持って来ずネックボトム側で調整するタイプで、いかにもマーチンらしく見せています。こういうところにもこだわりを見せているところがよいですね。

        

      おまけ:昔は”西部劇”という映画のジャンルがあって、その時使われる字体は上の「FOLK&WESTERN」のようなものでした。カウボーイが出て来る西部開拓者の話で、「シェーン」とかが有名でした。そのジャンルも後半になると「マカロニウエスタン」と呼ばれるようになってハリウッドでなくスペインで作られるようになり、二枚目スター”ジュリアーノ・ジェンマ”が私のお気に入りでした。

       

       

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      2018.08.07 Tuesday

      リペア ファイル その478

      0

        ヤマハ FG−400W / 表板膨らみ矯正・フレット交換(オーバーバインディング)・ナット交換

         

        大変珍しいYAMAHAのヴィンテージ・ギターFG-400W。一時のギブソンのようなサドルをアジャスタブルできる機能が付いています。ヤマハもこのようなモデルを作っていたんですね。

         

        表板は合板製で力木も細いこともあって剛性不足と思われます。ロウアーバウト(下部の円)全体の膨らみとブリッジのすぐ後ろ側が極端に膨らんでいました。少し熱をかけて矯正するため”あて木”を作り その上からヒーターを当て、同時にクランプで表板を締め込みます。温度と時間を調整しながら、少しずつ下げて行きます。

          

         

        Xブレイスから斜めに伸びるトーンブレイシングに沿って三角形のプレートを補強のため貼り付けます。

          

         

        さらにブリッジ裏に四角のプレートを貼り付けました。このプレートは先の三角形のプレートとオリジナルのブリッジプレートをまたぐ様に貼り付けてあります。このプレート厚(5ミリ)分 弦のボールエンドが下がるため弦のベクトルが変わり、サドルに掛かる圧力が高まる目論みです。

          

         

        フレットを交換します。指板調整後フレットタングの深さまで専用のノコギリで切り込みを入れます。オーバーバインディング仕様のためフレット端のタングをカットし、ヤスリで整形しています。

          

         

        フレットピークを軽く整えます。頂上が少し平らになった分を専用ファイルを使ってピークをつけ直します(フレットすり合わせ)。

          

         

        指板をマスキングテープで保護してからペーパーの番手を変えながらフレットを磨いて行きます。

          

         

        フレット端の処理:フレット端の面を滑らかにするためヤスリで軽く丸めてあります。

          

         

        ナットも牛骨製に交換します。ネームは”音叉"ロゴマークで入れてあります。この”音叉”マークが、オートバイまで作るYAMAHAという企業の共通デザインであるところが面白いですね。ちなみに”ヤマハ”は創業者の「山葉寅楠(やまはとらくす)」の姓から名づけられています。

          

         

        アジャストブルサドル。サドルを2本のスタッドで支えてサドル下に隙間を作ります。そのためスタッドを回せばサドルが上下し、弦高調整が自由に設定できるのです。エレキの「チューン・O・マチック」の応用ですが、アコギには珍しい構造です。この構造が楽器のサウンドを決定つけます。オーナーは「鐘を突いた様な低音」と表現されています。

          

         

        ご覧の通りトップの膨らみも矯正されています。

          

         

        わずか1年しか製造されていないというブラックラベル('74年〜''75年)。FG400Wには派手なピックガードが付いているそうですが、この個体は外されていました。それにしてもヤマハの黒ラベル・赤ラベルには面白い個体が多いですね。高級機ではないのですが個性があります。この個性を生かす楽曲との出会いがあれば鬼に金棒でしょう。

          

         

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        2018.08.02 Thursday

        リペア ファイル その477

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          Three S TC-035 輸出仕様   / 全体調整

           

          前回の続きで”スリーS”のデッドストック品を調整しています。

           

          この個体はカタログにないところから、輸出仕様だと思います。実際に70年代にはOEM生産で別メーカーの輸出モデルも作っていたので、こういうことはありえます。現在の中国製のギターのように当時は世界中に日本製のギターが出回っていたことでしょう。

           

          ”サンバースト”は渋いテイストをつけてくれます。ブルースですね。バック&サイドはローズ合板ですが、塗装膜が経年変化で適度に薄くなっていました。導管が浮かび上がっているので単板に見えます。

            

           

          ロトマチックタイプ・ペグが標準装備だったようです。高級機の証です。トラスロッドはボディ側にあるためマーチンヘッドに肉薄しています。

            

           

          口輪(リング)がサンバースト塗装でつぶれていますが、ここは抜けていた方がカッコイイのですが・・・(ギブソンはもちろんそうなっています)このモデルは小ぶりなのが解りますか?

            

           

          OMモデルと比べてみました。ブリッジの位置がの下半身の中心に来ています。OMよりも一回り小さいですね。

           

          弦長は同じのようです。カタログには女性向けを謳っていますが、現在でもこの大きさは受けいられると思います。ベッドサイドに立てかけておいて、寝る前にポロロンと気軽に弾けるギターの需要はあるようですから。(ミニギターがある程度売れているので)

            

          枯れているので音量も結構ありました。

           

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          2018.07.29 Sunday

          リペア ファイル その476

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            Three S  TG-005 / ネック調整・全体調整

             

            焼き物の産地でも過去の有名な作品は現地に残っていないケースが多いそうですが、ギターでも同じかも知れませんね。案外、メーカーに過去の作品が残っていないと思われます。商品ですので在庫にしないで”売る”のが商売だからそうなるのでしょう。

            恵那で生産された『鈴木バイオリン』のギターブランド ”スリーS”の最高峰"TG-005"。関係者が保持していた未使用品”デッドストック”ギターです。

             

            往年のカタログをコピーさせてもらいました。現在でも「Troubadourシリーズ」は魅力的に感じます。Troubadourは「吟遊詩人」の意味ですから、スモールボディギターを旅のお供にしたイメージかも知れません。この"TG-005"を「たま」というバンドが紅白歌合戦で使用してから人気が爆発したようです。その頃すでに生産終了でしたので中古市場で高値を呼んで現在に至るそうです。

              

             

            わずかネックの反りがあったのでアイロンで修正しました。指板の汚れは主に”ほこり焼け”で、空気中の油分がホコリとともに指板について雲った感じになっていましたので、アルコールでクリーニングしておきました。

              

             

            ボディも同じように”ほこり焼け”していますので、クリーニング剤できれいにします。この後バフでも磨いて仕上げておきました。

              

             

            小ぶりなボディは、マーチンのパーラーモデル「00」に当たると思われます。トップはスプルース単板・サイド&バックはローズ合板です。塗装は極薄。

              

             

            ヘッドの”トーチインレイ”は手で切り出した感じがそのまま残り味があります。よく見ると糸巻きのポストには糸を巻きつける穴が二つずつ開いていますね。

              

             

            「Tree S」の焼印。昔の国産品コピーモデルに見られる「ピッチ不良」(オクターブピッチが合わない・弦長補正が正しくないのでそうなる)は、ありませんでした。

              

             

            ”スタイル45”に見合うモデルなので貝のインレイが全体に入っています(ただし、本物の貝ではなくセルでした。でもこれも却って味があります)ポジションマークの"ヘキサゴンインレイ”は本物のアワビ貝が入っています。

              

             

            調整後の出音は、思っていたよりずっと大きくビックリしました。このサイズでも音量はあるんですね。低域は薄いのですが、全体的バランスがよく低音不足を感じさせません。歌の伴奏にピッタリだと思いましたが、忘れがちですが歌の伴奏用楽器は音量が必要です。

            品があり魅力的なギターでした。

             

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            2018.07.25 Wednesday

            リペア ファイル その475

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              ヤマハ L−8 / ネックリセット・フレットすり合わせ・再リセット

               

              ジャパンヴィンテージに呼ぶにふさわしい”ヤマハL−8”。欧米産の”スプルース”ではなく、国産の”エゾ松”をトップで使おうとした当時のヤマハの意気込みを感じる一品です。

               

              「ネック元起き」の症状に対して「ネックリセット」することになりました。デロンギのエクプレッソメーカーで蒸気を発生させて15フレットの位置から細いパイプでダブテールに蒸気を注ぎます。リセット用のジグをセットしてあるので、ボルトを巻き上げヒール部から押し出すようにネックを外します。

                

               

              仕込み角度を変更するのでネックヒールの下の部分(細いところ)をノミで整形してやります。ある程度ノミで形ができたら最後はボディのラインに合うように、細長い紙ヤスリをヒールとボディの隙間に差し込んで引っ張ってやります。こうすると(加減はいるけれど)ボディにぴったりと付くように整えられます。(専用定規を使ってサドル高を計算しながら仕込み角度を決めてあります)

                

               

              抜いた15フレットを元通りにしてから、クランピングします。そのときセンター・左右・上下の確認をします。(実はここで大変なミスを犯してしまいました。ネックの左右の振り具合の基準を「ピックガードに隙間なくぴったり合うように」としたことです。元々そう仕込んであったと思い込んでいました)

                

               

              フレットを平ヤスリで「すり合わせ」してフレットピーク(山頂)を整えて、再び三角ヤスリでピークを切り出します。その後ペーパーの番手を変えながらフレットを磨いておきます。

                

               

              12フレット以降がやや下がるようにしてあります。ここを真っ直ぐに仕上げるため”シム”を挿む方法も検討しましたが、この個体は将来再びハイフレット部が起き上がる可能性も考えられるので、あえてこのように仕上げてあります。サドル高も充分に取ってあります。

               

              完成。張りのあるサウンドが蘇りました。・・・・とここまではよかったのですが・・・依頼主にお渡しすると「1弦の位置がハイポジションになるに連れやや左寄りになって見える」との指摘が・・・・左右の振りに問題があったことが発覚!

                

               

              下のカットは、恥ずかしながら「リセット」をやり直したときのものです。1弦6弦を張って最終フレットで左右に振りの確認をしています。この時、ピックガードと指板の間にわずか隙間ができました。「思い込み」がいかに曖昧か思い知りました。申し訳ありません・・・

                

               

              こんなことは初めてでしたが、ネック仕込みの基本”センター合わせ” とともに実寸で当たることも大事だと改めて確認させてもらいました。(それにしてもお恥ずかしい話で・・・・)

               

              ヤマハのペグはオリジナル性が高いです。ゴトー社に依頼しないで自社で作っているんじゃないかと推測しています。ヤマハさんなら金属加工もお手の物かと思いまして。

                

              「ネックリセット」一部始終でした。おそまつ。

               

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              2018.07.21 Saturday

              リペア ファイル その474

              0

                Fritz Mueller 2010  / ネックリセット・脱着式ネックのためのビス部加工

                 

                バッハ協会副理事・中峰秀雄先生所有の”フリッツ・ミューラー 8弦ギター”。重低音から透き通った高音まで奏でることができるダブルトップ構造のギターです。複弦ギターを縦横無尽に弾きこなすギタリストのメインギターを調整するので、若干緊張しています。

                 

                伝統的な作りとは違うアプローチのギターですが、古楽器からエレキまで幅広く楽器を扱っているのでその知識を総動員して修理に当たります。

                 

                弦高が高いとのことで「リセット」することに。ボルトオン・ネックなのでビスを弛めて取るとネックを外すことができます。このケースではレイズドフィンガーボード下に1ミリ厚のマホガニー薄板を貼り付けて(3次元の面を均一に持ち上げるため細かいパーツを貼り付けました)、ネックを弦の方へ近づけることにしました。ネックの反りはロッド調整の範囲内で対処できました。ハイフレットが持ち上がってしまう「元起き」がなかったのでよかったです。

                  

                 

                調整はシビアです。ネックは”トーションネック”でしてローポジションに行くにしたがってプレーヤー側にねじれています。そこを考慮しながら各フレットピークを整えて行きます。平ヤスリで削ったピークを半丸ヤスリや三角ヤスリで切り出して、その後ペーパーの番手を変えながら磨いておきます。

                  

                 

                今回のリペア伴い改造も依頼されました。海外での演奏会に合わせて飛行機の機内持ち込みができるように「ネックを自在に取りはすせるようにできないか」と。昨今は楽器の機内持ち込み規制が厳しくなり、その結果 楽器の事故が増えています。大切な楽器を飛行機の床下の荷台に入れたくない気持ちは、よく解ります。なんとかしなくては・・・考えた末、ビス部を改造することに。

                  

                ボルトオンの脱着も慣れてしまえば難しくないですが、クラシックギター演奏家の右手は”爪”が命ですので、なるべく負担のないように大きい持ち手に交換することにしました。なかなか径やピッチに合うビスとノブを探すことができず、ホームセンターに通ったり抽斗の底を漁ったりして合うものを見つけました。

                 

                サイドに開いたモニターホールから棒を突っ込んでエンド部の蓋を外すとギターの内部を見ることができます。(マグネット式になっている)

                  

                 

                横木がファンブレーシングをまたぐような作りです。古くて新しい構造ですが、ギタートップ全体を鳴らす設計思想です。8弦なのに力木が細いですね。表板の剛性が高いのが解ります。

                  

                 

                 

                その表板は杉の”ダブルトップ”です。指板脇までハニカムコアが入っています。「スモールマン」はサウンドホール脇は厚くして鳴らないようにしていますから、「フリッツ・ミューラー」とは設計思想が違いますね。表板全体を鳴らす構造は、”シングルトップ”でも視られます。

                  

                サウンドホール下からブリッジまではハニカムコアが入ってなかった。8弦対策でしょうか?

                 

                ネックも鳴らす設計で指板下を7本のトンネルが抜けています。ナットとサドルは前のリペアマンによって高く調整されていました。ここに手をつけず弦高を下げることに成功しています。

                  

                 

                日本人はどちらかと言うと伝統的な作りのギターを欲する傾向があると思います。ネックの仕込みも「スペイン式」か「ドイツ式」が求められ、以前は「ボルトオン」は異端児でした。それがスモールマンが世界的に脚光を浴びたりしたお陰か、「ボルトオンだと音が悪い」とかは言われなくなりましたね。

                  

                 

                ブリッジの弦穴は”ダブルホール”、表板に肘が触れないようにする”アームレスト”が標準装備。多弦ギターの製作はルシアーの力量が解ります。弦の張力に対するトップの剛性を見極めつつ、軽やかにトップが弦振動に連動して動くようにしないといけないからです。6弦でも難しいのに8弦ともなればなおさらです。

                  

                フリッツ・ミュラーは間違いなく名工です。

                 

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                2018.07.17 Tuesday

                リペア ファイル その473

                0

                  ヤマハ LL-35D  / ネックアイロン矯正・フレットすり合わせ・サドル交換・リリック取り付け加工

                   

                  ヤマハ”L”シリーズでマーチンでいうところのDスタイルに当たるのが”LL”。このボディ厚が一番普及していますね。日本人には少し大きいと感じられるので少し小ぶりの”LJ”なんてもあります。

                   

                  弦高が高くなって来たので、調整にやって持ち込まれました。点検すると「元起き」しています。「ネックアイロン」で元起きを矯正してやりました(写真を撮り損ねた・・・)次に「フレットすり合わせ」をします。平ヤスリ・半丸ヤスリ・三角ヤスリを使ってフレットピークをいい状態に修正してやります。指板の端も同時に処理するので「にぎり」がスムーズになるので、プレーヤビリティが上がり好評です。

                    

                   

                  「ネックアイロン矯正」によって”仕込み角度”が強くなり、弦高を下げながらサドル高が高くなりましたので、「サドル交換」しました。ブリッジピン穴も修正するので「サドルまでの弦の誘導溝」や 6弦・5弦の巻き弦が太くなっている部分がピンの抜き差しの邪魔になるので、そこを修正する「ピン穴のスリット加工」も施しておきます。

                   

                  フレットがピカピカになると”ギターに対して新鮮な気分になる”んじゃんないか と勝手に期待しますが、いかがでしょう。

                    

                   

                  PUを搭載します。L.R.BAGGS ”Lyric”です。”Lyric”は、アウトプットジャックと一体になった”プリアンプ”と駒下に貼り付ける”Tru-Mic ”と”電池バック”とボリュームとプレゼンスの”コントロール・ボックス”から成り立っています。”Tru-Mic ”はピエゾ素子ではなくマイクで音を拾うシステムなので「エアー感」がありますね。

                    

                   

                  サウンドホール脇にコントロール・ボックスが貼り付けられます。

                   

                  LLシリーズの高級機ですので、一級の材木が作られています。ローズも柾目のいいものが使われています。ヤマハさんは材料を豊富に持っている感じがします。(クラシックギターではグランドコンサート”GC”シリーズがあり、こちらでもいい材料を見ることができます)

                    

                   

                  ヘッドデザインは「Y」を模った形(昔の先端が絞った形の「Y」ヘッドもいい)がシンプルながら普遍性があります。このヘッドに憧れたもんです。日本のフォーク/ニューミュージック・シーンの大物「さだまさし」「石川鷹彦」「南こうせつ」などヤマハを使っていましたね。それが高嶺の花でね。いつまでもイメージの中にあるのです。

                   

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                  2018.07.13 Friday

                  リペア ファイル その472

                  0

                    マーチン D-18 / ネックヒール修理・ネックアイロン矯正・フレットすり合わせ・駒上面削り・サドル調整

                     

                    若い時はセオリー通りに修理しないと機嫌が悪くなったりして「もうリペアはヤダ!製作家になる」なんて思ったりしたものです。”不惑”の歳を過ぎたあたりからは、「それぞれ事情があるから、その中でベストを探ろう」と考えるように変わって来ました。自分の車をなじみの自動車整備屋さんに持ち込むときは「ここだけ直してね」とフトコロ事情で頼んだりしています。

                     

                    弦高が高くて弾けなくなっていました。ヒール部が浮いているので本来ならば「ネックリセット」で仕込み角度を変更してやらねばなりません。しかし、ここではちょっと変則のやり方で対処することにしました。

                     

                    ヒール部の隙間にクサビ状の薄板を差込みニカワで接着することに。

                      

                     

                    将来「リセット」するとき、外しやすくすることも視野に入れながらの処置です。

                      

                     

                    ヒール部が固まったので、アイロンで矯正します。何度も温度や角度を変えながら少しずつ矯正してやります。「く」の字になっていましたので「一」の字になってくれれば”おんの字”としました。

                     

                    フレットも結構減っていましたが「すり合わせ」でフレットピークを修正します。

                      

                     

                    「すり合わせ」してペタペタになったフレットを 三角ヤスリで端から攻めて半丸に仕上げました。ヤスリ傷はペーパーの番手を粗い♯180から細かい♯1500まで何枚も変えながら磨いて行きます。

                      

                     

                    仕込み角度が不十分なので、ブリッジ(駒)側を削って下げます。これは弦高を下げるためサドルを削って下げると、ブリッジピン穴との落差がなくなってしまうときに、おこなう処置です。つまりサドルより駒の上面は低くないといけないのです。

                      

                     

                    完成。変則修理でしたが何とかうまく治まってくれました。米国で入手してD-18だそうですが、国内のものとリングがちょっと違いますね。(1重目と3重目が細い黒)

                      

                     

                    マーチンは修理がしやすいギターです。ニカワ接着やらラッカー塗装やらが修理に有利なのですが、各パーツの加工精度が高いのもその理由です。持っていればまた手を入れて次ぎの世代に受け継がれて行くでしょう。

                    マーチンギターには老舗というだけでは説明できない、ほかにはない「付加価値」を感じますね。

                     

                    関連ブログ:マーチンギター修理インデックス:http://9notes.jugem.jp/?eid=307

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                    2018.07.01 Sunday

                    リペア ファイル その469

                    0

                      Mntthins  Dammann 2012 /  各種調整

                       

                      マティアス・ダマン Ceder Top(杉)を調整したおり、隅々まで観察したのでそのリポートをさせてもらいます(持ち主に承諾を得ています)。ダマンは世界ではじめて”ダブルトップ”のクラシックギターを完成させました(ゲルノット・ワグナーの協力による)。ダブルトップとは、表板の中にNomexハニカムコアがサンドイッチされていて強くて軽い表板材のことです。

                       

                      剛性と軽さを合わせ持つトップは、音量のアップ、反応速度のアップ、遠達性のアップ、ダイナミックスレンジの広さアップを実現させました。これらは現代的な演奏に求められるものでしたので、瞬く間に世界の一流クラシックギター演奏家に支持されることになります。

                        

                       

                      また演奏性もアップされています。レイズドフィンガーボードもそのひとつであります。ハイポジションでの演奏性がよくなりました。また表板に対しての進入角度の変化が弦振動ロスを減らす効果もあり音量・音質がアップされることにもなりました。

                        

                      フレットは背の高いジャンボフレットが使われています。これによりフィンガリングが楽になり早いパッセージに対応しやすくなります。また音の立ち上がりがよくなりました。

                       

                      ヘッドのジョイントは、ハウザーなどに見られる伝統的な”継ぎ”が施されて高い木工技術を誇っています。外部・内部とも1級の技術で完成させていて優れた工芸品でもあります。ネックヒールは一本竿で継ぎなし。深くえぐれているので操作性も高いでしょう。

                        

                       

                      ヘッドのスリットはナット側で四角く深いため弦が当たることはありません。シャーラーの最高峰の糸巻き。軸受けにはベアリングが採用されています。

                        

                       

                      特筆すべきは表板です。下から強めのライトを当てると透けて見えます。私が多く扱う中国人製作家”クォーユロン”のものより粗めのNomexコアが採用されています。力木が当たる部分は元の材がザクられず残されている?

                        

                       

                      駒下に縦目に対して直角に取り付ける力木はなく、代わりに高音側にパッチが2枚、低音側にバーが取り付けられています。力木はサウンドホール下からエンドに向かって垂直方向に対して少し斜めに3本平行に並んで取る付けられています。こんな力木の構造は初めて見ました。

                        

                       

                      スペイン式のネックジョイントではなくドイツ式だと思いますが、そのネックブロックの形はこんな船の先端のような形になっています(理由はなんだろう)。またトップとサイドを繋ぐラインニング/ペオネスにはバルサ材の太くて広めのものが貼り付けられていました(表板の振動面積が狭くなるのになんでだろう。強度の問題か?)

                        

                       

                      力木は細くて背の低いものでした。サイドはローズ/シープレスの合わせが採用されています(ラミレスみたいだな)。

                        

                       

                      ブリッジの弦穴はダブルホール。口輪飾り(ロゼット)は細い色違い板材を何重も巻いただけのシンプルなものでした。高い技術と最新理論に裏打ちされたダマンは、演奏家だけでなく職人をも魅了します。

                      日本国内ではまだまだ普及率が低い”ダブルトップ”ですが、真空管がトランジスタに置き換えられていったように、後10年でその勢力分布に変化がおこるだろうと私は考えています。

                       

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