2018.01.17 Wednesday

リペア ファイル その429

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    マーチン  D16−A  /   バインディング外れ修復・ピックガード交換

     

    ”アッシュ”というアコギには珍しい材木がサイド&バックに使われているマーチン・ドレットノート。バインディングが外れてきました。”セル”素材で巻いてあるバインディングは、どうしても経年変化で痩せて来てしまいます。

     

    腰のくびれ部分は特に剥がれやすくセルが浮いて来ます。この修復には、セルをドライヤーで温めてから接着剤を入れて、テープとクランプで固定してやることで解決できます。

      

     

    その後、はみ出た接着剤をきれいにしてから、細かい番手の水ペーパーで研いでバフで磨いて仕上げます。このギターのセル・バインディングは”べっ甲柄”でした。白バインディングとは感じが違いますね。

      

     

    黒いピックガード(PG)を”べっ甲柄”に交換したいとのこと。ますはPGをドライヤーで暖めながら少しずつ剥がして行きます。焦るとトップのスプルース材も引っ張られて引き裂いてしまうので、気をつけながら・・・ このPGは新しいのか トップに両面テープが残ってしまいました(古いとテープもいっしょに剥がれてくれる)。それを”Zippo”オイルでクリーニングします。

      

     

    何枚かの素材(塩ビ材)の中から明かる目の一枚を選択されました。これをリングにピッタリ合うように加工します。

      

     

    PGの面の処理もしっかりやってギター本体に馴染むように仕上げました。黒PGとは全体の印象がすっかり変わります。素材の威力って大きいですな。この形はティアドロップ型と言いますが、「涙のしずく形」という意味です。アコギの定番の形ですが、マーチンギターの代名詞にもなっていますね。

      

     

    ローズでもマホガニーでもないサイド&バック材のアッシュが使われていますが、サウンドはマホとロースの中間くらいです。これはいいサウンド傾向で、ほかの広葉樹も使えることを意味します。ローズ規制がかかり、これから別の材に需要が移って行くでしょうから、アッシュなどの「環孔材(導管が環状にならんでいる木種)」も使われて行くことになる と私は読んでいます。

     

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    2018.01.13 Saturday

    リペア ファイル その428

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      タカミネ LTD 2017 / 指板端丸め処理・弦高調整(ロッド調整・サドル調整)

       

      ブラックフェイスのTakamine LTD 2017です。毎年数量限定で発売されるLTDシリーズは、世界中にファンがいて完売される人気シリーズですが、2107はタカミネがある地元・『木曽 馬込宿(きそ まごめじゅく)』をモチーフにしてあります。

       

      タカミネは岐阜県中津川市の坂下町に位置しますが、木曽川を挟んで対岸には中仙道の『馬込宿』があり車で15分くらいの距離です。馬込宿は石畳が残る江戸時代の街道筋の雰囲気を残した木曽の山の中の観光地ですが、とても趣きがあり気持ちが癒される場所です。

       

      依頼主は使い込まれた米国製ギターをメインにされていますが、地元メーカー”タカミネ”を所望されてこの楽器を入手されました。ただどうしてもメインギターに手が伸びるとのことで相談に見えました。まず弦高が高いことがその原因でしたが、ほかには「ネックにぎり」が、使い込まれたギターと比べると角が立っているように思われます。そこで指板の端を丸める処理を施しました。

       

      指板バインディングの面をヤスリを使ってなだらかなアールに加工します。

       

      次に指板上面の角を丸めます。お手製の”スクレーパー”をを使ってエッジを丸く加工します。エレキメーカー『フェンダーカスタムショップ』や『ハイエンドギター』ではお馴染みの処理ですね。こうすることで なめらかな握り具合を得られます。

       

      指板には石畳が描かれています。石畳の脇には「灯篭の明かり」「菅笠」「花馬」「水車」が見えます。実際に馬込宿では「水車」がランドマークになっています。ピックガードに描かれているのは、「石臼」の溝のパターン。米・麦・蕎麦などの外皮を取るのに「石臼」は必需品でした。擦れて使い物にならなくなった臼は、庭の”飛び石”などに使われました。

        

       

      プリアンプは最新のチューブアンプ「CTP-3」が搭載されています。ミニ真空管を使ったアンプで”ウォームなサウン”を表現します。2ピックアプ対応になっていますので、純正のアンダーサドルピエゾ(パラスティックピックアップ)以外に後付けのマグネットPUやコンタクトピエゾを増設できます。

       

      2wayサドルでたしかなイントネーションを実現しています。新設計のブリッジはサドルとピン穴が落差ができるようになっており、サドルへの立ち上がり角度がえられやすい構造です。今回弦高調整のため、ロッドを閉め直すとともにサドル底面を少し削りました。

       

      ボディサイズがOMタイプですが、豊かな音量がありました。それにしても『馬込宿』をモチーフにするとは何だが「灯台下暗し」って感想です。「木曽路はすべて山の中である」は島崎藤村『夜明け前』の有名な冒頭文ですが、”タカミネ”も”9notes”も山の中にあります。

       

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      2018.01.09 Tuesday

      リペア ファイル その427

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        Taylar NS32-CE /  力木はずれ

         

        ごひいきいなっているギタリスト「土門秀明」氏のギター「テーラーのナイロン弦」。30分くらい弾くとどこか共振する音がする、とのこと。プリアンプのコード類かと思いましたが、どうもそうでない模様。「共振の原因」を探ることになりました。

           

         

        この写真は原因にとなる「力木」を探し当てたときのカットですが、ココまで来るのにあっちこっち手を入れました。まずはネックとのジョイント用のビスを締め直す(テーラーはボルトオン・ジョイントのため)、その次は裏・表の力木を一本一本調べて行く。特にサイドとのつなぎ目が外れるケースが多いのでそこを重点的に調べました。ここは終盤でした。

         

        接着剤を流しこんでジャッキアップの要領でクランピングし接着圧力を掛けます。その際 ボディの上下はクランプで挟んでボディの膨らみを抑えます。

         

        質のいい黒檀でブリッジが一体整形されています。サドルの下にはピエゾが敷かれていますが、生音でもバランスの取れたクリアーな音がします。エレアコ仕様ですが、クラシック/ガットギターのポイントをうまく押さえた楽器に仕上がっています。

          

         

        ネックヘッドは”スカーフジョイント”されていますが、高度な加工です。

          

         

        サイド&バックはマホガニーの単板で温かい音です。12フレットジョイントですので、ブリッジはローワーバウトの中心に来ていますね。力木も大変細く、弦振動に敏感にできています。メーカー仕様のクラシックギターの力木は、頑丈な力木のものが多いので「音優先設計」か と感じました。接着不良は論外ですが。

          

         共振音がなくなってストレスなく演奏できるようになったと思います。

         

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        2018.01.05 Friday

        リペア ファイル その426

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          マーチン 000−42 / ネックリセット・シム作製(塗装)・フレット交換・ロングサドル交換

           

          『ネック元起き』のため弦高調整でサドル高が低くなってしまったため、「サドル高を高くしたい」との依頼。ネックリセットで『仕込み角度』を変更します。この「リペアファイル」でリセットをアップするのは、たしか初めて(楽器店の仕事ではときどきやっています)です。指板下に”シム”を挿んで角度をつけてあります。

           

          14F以降の指板の接着をラバーヒーターを使って熱を加えて外します。15フレットを抜いて小さな穴を開け、その穴からスチームを吹き込みます。エスプレッソマシーンで蒸気を発生させてホースでスチームを送り込みます。15フレット下に丁度ダブテールの隙間が来ることを発見したリペアマンがいたのですね。それが世界中に広まったのでしょう。

            

           

          お手製のジグでネックを無事外しました。あたらしめのマーチンは「にかわ」を使っていませんね。古いマーチンより外すのに手間取りました。また”42”なので指板周りに貝が入っていて気を使います。

           

          仕込み角度を図面を引いて実測計算します。本来はボディが弦張力で膨らむところまで計算しないと正確な数値は出ないのですが、そこまで肉薄できないので±0.5ミリは仕方なしとしました。計算にしたがってネックヒールを削っていきます。

            

           

          ある程度刃物で削ってからはペーパーをスライドさせてボディサイドと密着するように仕上げます。次に変更した「仕込み角度」によってできた指板裏の隙間に”薄板で作ったテーパーシム”をくっ付けます。この楽器の指板にはバインディングが巻いてありますので”シム”にも同じようにバインディングを巻いてあります。また、ダブテールがゆるんだ分 薄板を接木して仕込みがタイトになるようにダブテールも調整しておきます。

            

           

          指板を外す際にできた細かい傷(貝の上の塗装は剥離しやすい)をラッカー塗装で補修しています。バインディング下に貼り付けた”テーパーシム”も塗装しておきます。    (リセットでタッチアップ塗装することはそうそうないですが、”42”クラスではそこも気を使って仕上げています)

            

           

          ニカワを使って接着。冬ですので朝から部屋の温度を上げて、ニカワが”噛む”(固まってします)ことがないようにしています。

           

          フレットが低く押し弦し難いため『リフレット』しました。Jescar♯55090を選択。マーチンよりやや太めで背の高く鋭角なフレットです。トラスロッドがないためフレットタングをクサビ状に入れることでネックの剛性を作っています。

            

           

          フレットピークをあわせるために軽く『擦り合わせ』し、その後ペーパーの番手を変えながら磨き上げて行きます。

            

           

          完成しました。ロングサドルも作り変えてあります。「将来、トップが張力によって膨らんで来てもサドルの削り代があるように」との依頼でしたので通常より高めのサドルに仕立ててあります。ロングサドルの端(エッジ)が立つように、サドルはブリッジと接着してあり、ブリッジとサドルが面一(つらいち)になるように削ってあります。

            

           

          ナットも牛骨に交換してあります。仕込み角度を付け直したネック。

            

           

          バインディングが巻いてあるテーパーシムが指板の下に見えます。

            

           

          トップ全体に貝が巻いてあるゴージャスな作り000−42、弦長はOMよりも短く ベンド/チョーキングを多様するブルースにはもってこいです(クラプトンモデルも使う ”000” モデル  000−28/42)

            

           

          仕込み角度変更前の鳴りは「なんで?」思うくらい42クラスに見合わないサウンドでしたが、変更後は驚くべき音量アップとバランスで依頼者も(私も)びっくり。元々ポテンシャルの高い素材でしたので、弾き込めばさらに音に艶が出て来るでしょう。サドルが高くなった分、弦振動エネルギーがトップ/ボディに伝わるようになったのと、トップに対して弦の進入角度が強くなったので、ブリッジの運動が上下および前後に大きく動くようになったからと推測しています。

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          2017.12.31 Sunday

          職人と工員 / 玄人と素人

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            2017年もあとわずか。このブログにお付き合いくださった皆様、ありがとうございました。

             

            バタバタと一年仕事ばかりの日々でしたが、仕事ができることは”うれしい”ことですし、

            そこで成長できることも”喜び”です。(ただ、仕事が”楽しい”と思ったことは一度もなく、

            ”苦しい”ことの方が多いです。仕事とはそんなものと思っていますが、性格かな?)

             

            年末に際し今年一年で感じたことを記してみます。

             

            若い職人が転職しました。高校を出て12年 楽器作りに関わり一人前の職人でした。

            油が乗り切ったときなので、なんでもこなします。いい腕でした。

             

            30歳・35歳は「転職適齢期」で、売り手市場だと言います。

            その期を逃すことはないでしょう。いい決断だと思っています。

            彼は選んだのは別の業種で安定が見込める業界でした。

             

            取引している楽器店の若い店員さんも、この業界を去っていきました。

            楽器業界は将来性が薄いのです。それは事実です。私もそれを実感しています。

             

             

            昔は「腕に職をつければ一生喰っていける」と言われたものです。

            しかし、現在は”腕”だけでは食べていけないでしょう。

             

            (「腕があるのは当たり前」という前提で話をしますと)

            昨今の職人は腕(技術)以外にも「営業」もできないといけません。

            「経理」も「企画」も「研究」も「管理」も・・・総合的な能力が求められるのです。

             

            ただ一般的には、まだまだ「職人さんは口が下手なのはしょうがないですよ。黙っていい仕事

            すれば喰えなくなることはないでしょ。そういうものなのよ」というイメージが蔓延しています。

             

            職人も飛びぬけた”腕”と”発想”を持つ者は、上の言葉とおりかも知れませんが、

            上級者の職人でもよっぽど大手の会社に属していないと全うできないでしょう。

             

             

            「職人」と「工員」の違いに関して。

            定義がある訳でもないのであくまで私の感じたことですが、

             

            メーカー勤務でひとつ・ふたつの仕事をこなすエキスパートは「工員」。

            メーカーは、「職人」を求めておらず「早く正確に数をこなせる」人間を

            各ポジションに配置して「利益」を追求し、その対価として給料をきちんと保障する。

             

            一方「職人」とは、下積みを経て仕事全体を知る機会を得た者。

            腕が付く前に「講釈をたれる」ことはご法度。封建的ですね。この時代にはマッチしません。

            収入は腕次第だが安定していない。

             

            昔は手仕事が多かったので発注する者も受ける者も生活のペースが同じで、

            その給金で世間が回っていましたが、近代は工業化したため効率重視で安価な製品が求められます。

             

            したがって「職人」は生息しづらい状況です。

            「職人」になりたいと思っても修業する機会が減っています。腕を磨くにはある程度の数をこなすことが

            必要です。「職人の親方」にそれだけの仕事がない。親方一人分の仕事が精一杯なのが現状でしょう。

             

            「職人」という言葉が美化され過ぎているんじゃないでしょうか?

            日本もドイツのように国が補償する「マイスター制度」の導入を考える時期では?

             

             

            亡くなってしまいましたが、岐阜の長良に「凄腕の素人」職人がいました。代々酒屋の家柄でそこを継ぎましたが、

            職人になるべく自力で(あるいは職人を雇って教えを乞うた)腕を身につけ「茶杓や花入れ」を作りました。

             

            骨董屋で過去の品を手に入れ使ってみて研究し、”遊びこころ”を持って自身の仕事に当たりました。

            それこそ、並の職人の作品にはない”気品”が立ち込めていて魅了されました。

             

            優れた書や陶芸を残した『本阿弥 光悦(ほんあみ こうえつ)」だって「刀の研ぎ」が本職でしたね。

            本業でなくても飛びぬけた仕事をする例は数々あるでしょう。

             

             

            昨今は専門学校が充実しているので、そこを卒業してすぐ独立する人も多いです。

            独立する人は”腕に自信がある”ので、勝負する気になるのでしょう。実際うまい人が多いですね。

             

            ただどうしても経験値が低い。親方の背中を見て育った者は、仕事を”盗み見”し自分に経験に換えていきました。

            そういう経験が薄い。それでも今はユーチューブなどで世界中の仕事を見られるので、問題ないかな。

             

            そして『工房』を開設します。しかしそこがゴールではありません。

            『工房』を続けることの方が開くことよりずっと難しいのです。

             

            木工でも楽器製作でも開設後3年で、どのくらい基盤を作れるかでその後が変わって来るでしょう。

            はじめは身内や友人が仕事をくれるのでそこで経験を積ませてもらって、

            他所からの仕事をもらえる身にならないといいけません。

             

            後はその人の運や境遇次第ですが(努力は当たり前)、お金がなくたって立派な仕事をした人はたくさんいますし、

            恵まれた境遇で優れた仕事をした人もたくさんいます。要は境遇という「枠(わく)」を嘆いても仕方ないので、

            その中で全力を出すことでしょう。

             

             

            と偉そうなことを書いてしまいました。

             

            「何を求めているか」で、その人その人で答えが違いますね。

            そこに「工員・職人/玄人・素人」の差はない、と言えます。

             

            将来性だって、ある程度は自分自身で切り拓いていけるはずです。

            そう信じています。

             

            来年がよき年となりますように。

             

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            2017.12.27 Wednesday

            リペア ファイル そのリペア425

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              キャッツアイ /  ペグ交換・ナット交換・サドル交換・ブリッジピン穴修正

               

              かつて東海楽器がマーチンとライセンス契約して製造したブランド”Cat's eyes”。今も人気がありますね。各社がフル・マーチン・コピーを試みましたが、なかなか細部まではコピーし切らなかった中、ライセンスを取った東海楽器が一歩リードした感じでした。

               

              依頼主によってUsed楽器が丁寧にピカピカに蘇っていましたが、よりグレードアップするためナット・サドルなど当工房が手を入れることに。ペグ交換もそのひとつです。精度の高いゴトー社製のオープンギアタイプに交換します。まずは外したペグのネジ穴を塞ぎます。メーカーによって多少ビス穴の位置が違うので修正が必要です。

               

              ボタンは「バタービーンズ」型です。ブッシュは6角タイプで、あえて角がランダムになるように入れてあります。マーチンがそうなんです。国産はこの辺りをきっちり角を揃えて入れてあります。几帳面なのは国民性?

                

               

              ナットも交換。牛骨素材の原型ナットを削り出して 溝にきっちり合うように整形します。次ぎに弦溝を切る準備をします。ヘッドを養生テープで保護して弦幅に対応した専用インチやすりで切り込みして行きます。専用ヤスリにはピッタリ幅のU字型と、底がピッタリ幅でそこから少し広がっていくV字型があります。メンテナンス上は少し広がっていくV字型がいいです。理由は、弦溝の脇が弦交換のときに欠けたりすることがあるからです。ただホールド感はU字型が上ですので、ケースバイケースで使い分けています。

                

               

              完成しました。依頼主が来店した折に演奏し「ナットの両端をもっと大きく丸めて欲しい」とのコメントを戴きましたので、その場で再加工し、実際は下の写真より角はもっと丸くなっています。

               

              サドル交換。牛骨素材を溝にピッタリ合うように整形します。弦振動をボディにしっかり伝えるために底面の精度が出ているかが大事。次にゲージを使って12フレットで1弦2ミリ・6弦2.5ミリになるようなサドル高を2点計測し、サドル高を決め、その点を結ぶようにして指板アールを写すと各弦理想のアールができます。

                

               

              ブリッジピン穴も再整形しておきます。穴の開口部の面を大きくします。こうするとブリッジピンが抜き取りやすくなります。また、弦のボールエンドからの巻上げで弦の末端は太くなっているので、ピン穴に溝を切っておくと、弦がストレスなくサドルに乗っかってくれます。ミニノコギリを使って切り込み・・・

                

               

              専用ヤスリで仕上げます。このブリッジはサドルとピン穴が近くで立ち上がり角度も適性です。

                

               

              ヘリンボーンが巻いてありますね。べっ甲柄のピックガードもおしゃれです。力木は低めのXブレーシングでノンスキャロップ。

                

               

              ”28”ばりの倍音構成で余韻のあるサウンドです。”ノンスキャ”のためかタイトで音圧を感じます。鳴るまで時間のかかる”ノンスキャロップ・ブレイシング”と言われていますが、Usedであれば十分慣らし運転は終わっています。今回のチューンでさらに育って欲しいところです。

               

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              2017.12.23 Saturday

              リペア ファイル その424

              0

                MARTIN LX1 ”リトルマーチン” /  トップ割れ補修

                 

                小さいけれどりっぱな”マーチン・ギター”です。表板(トップ)はスプルース単板、サイド&バックはデコラ(?)。ドレッドノートをスケールダウンしてあります。ちなみに”ドレッドノート”とは「イギリス海軍の戦艦名」から拝借した名称です。

                 

                トップの駒下の板の継ぎ目が剥がれてしまっていました。乾燥から割れてしまったと思われます。駒は表板に対して垂直に貼り付けてあるため、その周辺の木は伸び縮みしにくくなります。そのため駒付近の表板が割れる現象がおきるのです。

                 

                湿度調整して表板の割れ目を再び復元してから接着します。(湿度調整しても復元しないときは、薄い板をその隙間に差し込んでふさぎます)割れ止めのため『パッチ』を作ります。0.8ミリくらいのマホガニーの薄板を2枚 ポンチで抜いて作り、その木目が交差するように重ねて接着したものを使います。(ケースによっては『パッチ』を使わないこともあります。板厚が3ミリあれば大丈夫、と考えるからです)

                  

                 

                『パッチ』に接着剤を塗り、その上下からマグネットではさみんでプレスします。上側のマグネットの位置をあらかじめ決めておけば、正確なところに『パッチ』を貼り付けられるのでこの方法は優秀です。(米国の通販会社”スチュアート・マック”が推奨し広めましたね)

                  

                 

                ほとんど分からないくらいにくっつきました。

                 

                指板と駒は黒檀にすごく似た材が使われています。たぶん樹脂製だと思うのですが、黒檀ぽいです。ネックはラミネート材でできています。木目のようできれいなラインです。バインディンなど省略されていますが、うまく全体のバランスを考えてまとめてあります。

                  

                 

                ヘッドには「マーチン・ロゴ」が。駒のブリッジピン穴からサドルにかけて弦の誘導溝が切り込まれています。これはいいですよ。ほかのモデルにも是非採用してもらいたい。

                  

                 

                スケールは短いですが、レギュラー・チューニングなので気軽に演奏できますね。ボディマスがないので若干高音よりサウンドですが、これはこれで面白い響きです。ベッドサイトに一本欲しいという方も多いと聞きます。テーラーやSヤイリなども作っていますね。2本目のギターとしていかがでしょう。

                 

                関連ブログ:

                マーチンギター修理インデックス:http://9notes.jugem.jp/?eid=307

                 

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                2017.12.19 Tuesday

                リペア ファイル その423

                0

                  フェンダー・カスタムショップ ST/ フレット交換・ナット交換・フレットのボールエッジ処理

                   

                  レフティーのブルースマン所有のFenderカスタムショップ”ダゴダレッド”のストラトキャスター(レリック仕様)。この色が渋いねぇ。スプリングがローヴィンテージ製に、イモネジがスティールに、キャパシティーが古いものに交換されていますが、後はオリジナルだそうです。シングルPUなのに驚くべきノイズの少なさでした。さすがカスタムショップ。

                   

                  フレットの交換時期に来ていたので「リフレット」することに。依頼者と相談のうえ”JESCAR #55090 Evolution"を選択しました。Evoは通常のフレットとステンレス・フレットの中間くらいの硬さを持っていて、減りが少ないうえステンレス特有の硬い音が苦手な方にピッタリなフレットです。

                  同業者から「スタジオミュージシャンが頻繁にリフレットするのを嫌い、なおかつ硬い音はイヤなときにEvoを勧めている」と聞いたのでその話を依頼者にしたら乗ってくれました。(依頼者も元々リペアマンだから理解が早い)

                   

                  丁度カスタムショップが採用していたフレットも「ミディアム・サイズ・フレット」だったので、幅はほとんど同じ背だけ少し高くなるサイズ(#55090)でした。指板を削るとハカランダであることが判明!「スラブボード」でなく「ラウンドボード」です。ドットはマザーオブパール。あまり指板面のストレート性を求めると指板が薄くなってしまうので、指板面で精度を追求しないようにしてフレット上面で精度を出すようにします(楽器の寿命を長くするためとサウンド変化させないため)。

                    

                   

                  切り込みもフレットタングの深さギリギリに収めます。そうしないと指板を分断してしまうので。「ラウンドボード」はそこを気をつけないとね。タングの厚みを調節しながらフレットを打ち込んで行きます。やはりニッケルのフレットより硬い。

                    

                   

                  カスタムショップのこだわり”ボールエッジ”を再現するためフレット端処理を施します。この処理をするとフレットの引っ掛かりがなくてスムーズなうえ、エッジが立っているのでフレットが端から端まで使えて広くなります。1弦と6弦が”弦落ち”しなくなりますね。

                    

                   

                  ナットを牛骨に新調します。指板アールに合わせてナット底面を加工。ナットの弦溝の間隔はオリジナルをコピーします。こうすると違和感なくプレーできます。めったにレフティーの”ナット切り”をやらないので若干感覚がおかしい・・・

                    

                   

                  ヘッドもリバースになっています(当然か)。Evoの色が金属の配合からやや”黄金色”なのが難だと思われましたが、磨いてみるとそんなに違和感はありませんでした。酸化すると色着くか。

                    

                   

                  ”レリック”仕上げなので”ラッカー・クラック”が入っています。けっこうハードなレリックです。レフティー仕様は右仕様の反転ですが、頭がそれについていけないです。ポットはCカーブ、シンクロナイズドトレモブリッジのアームの位置が逆、PUのマグネットの頭の出も逆、なので通常とは別パーツが使われていることになります。

                    

                  依頼者は元々は右利きのギタリストでしたが、アクシデントがあり左に持ち替えプレーしています。並大抵でないよ。ほんまもんのブルースマンやね。

                   

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                  2017.12.15 Friday

                  リペア ファイル その421

                  0

                    フェンダー・ジャパン リッチーブラックモア・モデル/ 導電塗料・ ポット交換・ジャック交換・弦高調整・ロッド調整

                     

                    ラージヘッドにブレット・トラスロッド、2個のストラングリテイナーが特徴のリッチー・モデルST。私はハードロックファンでなかったのでディープパープルにはまりませんでしたが、それでもリッチーブラックモアのトリッキーなギターサウンドには十分酔いしれました。

                    このジャパン製のストラトキャスターは彼の楽器を再現しています。

                     

                    ヴォリューム・ポットがダメになっていたのでCTS製に交換しました。アウトプットジャックも交換時期だったので、そこはスイッチクラフト社製へ交換。ジャックに繋がる配線材も同時に交換し情報量アップを計ります。ノイズが載るのでキャビティー内を導電塗料を塗って覆い、そこにアースも落とします。これでずい分ノイズが改善されました。

                      

                     

                    3ピックアップの様に見えますが、ミドルPUはカバーだけでダミーです。つまり2シングルPU仕様で3wayスイッチで操作します。リッチーがミドルPUは使わなかったのですね。PUのマグネットは通常より一回り大きく磁界も広く、チョーキングで音痩せしません。

                     

                    特筆すべきは指板のスキャップ加工で、イングヴェイ・マルムスティーンの本家はこちらです。こういう指板へのアプローチをリッチーが取ることができたのは、古典楽器への造詣が深いからだと思います。(近年はこんな音楽をやっているhttps://www.youtube.com/watch?v=egRzQd_RsxE

                      

                     

                    イングヴェイのスキャロップとの違いは6弦側のローポジションはえぐってないこと。

                      

                    30年以上前はまだ規制品のスキャロップ指板がなくて、けっこうこの手の指板に改造する仕事がありました。改造ではフレット間際までえぐることは難しくやや台形な凸状になってしまったものです。ポジションマークも削ってなくなってしまうので、はじめに全部外してから作業したことを覚えています。

                     

                    一時期のラージヘッドのストラトの人気はリッチー人気によるものだと思われます。世界のギター少年の憧れの的でした。だれしもやったよね。タララン・タララン・タララン・タララン・・タララン・タララン・タララン・タララン・・・(分かります?ハイウエイスターです。https://www.youtube.com/watch?v=CfgGXWA4c-Q

                      

                    ディープパープルと言えば、もうひとり天才がいました。キーボードのジョンロード。彼のハモンドオルガンもすごかった。(2012年に亡くなっている。残念至極)

                     

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                    2017.12.11 Monday

                    リペア ファイル その420

                    0

                      グレコ SG /  ネック付け根折れ・接着・補強・塗装

                       

                      30代のパンクスが高校生のときに購入したという古いグレコのSG。リアピックアップはダンカンに載せ換えてあります。そのギターがネックの付け根からポッキリ折れてしまっていました。 「直りますか?」 「直ります(断言)」

                       

                      まずは、折れた箇所を接着します。木のカスは取り除きますが なるべく同じ位置に戻すために、断面の凸凹をガイドにして再接続を試みます。もしネックが折れたら その面に触れないようにしてください。そのままの状態の方がきれいに直ります。

                       

                      前後に多少のズレが生じるときは、このように引っ張って修正します。センターずれがないか、弦長ずれがおきていないか、など確認作業は怠らないように。(一度、接着剤を入れる前にシュミレーションしてみます。接着剤が入ったら速やかに作業できるように)

                       

                      ジグを新たに作り、折れた部分をまたぐように補強材「スプライン」用の溝をルターで掘り込みました。

                       

                      溝に接着剤を入れてスプラインを挿入。

                       

                      さらにボディ側に「ダボ」を入れて補強します。

                       

                      ノミや小刀を使い整形して、ウレタン塗装の面にペーパーを掛けて塗装の”くいつき”を良くする準備をします。

                       

                      さぁ、塗装。まずは下地を作ります。今回はウレタン塗料を吹き付けました。

                       

                      その後、黒のラッカー塗装を吹いて、それからクリアーラッカーで鏡面を作って仕上げて行きます。

                       

                      水研、バフ磨き、組み立て、完成。どうぞご覧ください。

                      といきたいところですが、写真を撮り忘れてしまって・・・・全体の姿のカットがありません。とほほ。

                      でもでも、グレコSGは無事復活して つんざくようなサウンドで鳴ってくれていますよ。

                       

                      まだまだ頑張れ! グレコSG!

                      Punks Forever! (おいらはポジパン)

                       

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